2011 Fiscal Year Annual Research Report
光-微生物フィードバックシステムの構築と2次元培養での新機能発現
Project/Area Number |
21360192
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
尾笹 一成 独立行政法人理化学研究所, 前田バイオ工学研究室, 専任研究員 (10231234)
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Keywords | 微生物 / マイクロ流路 / 光フィードバック / ユーグレナ / 揺らぎ / ニューロコンピューティング |
Research Abstract |
生物系の時間発展システムに物理的なフィードバックを与える複合システムを構築し、「潜在的に方向性をもった時間発展揺らぎ」を研究すべく、本年度は光-微生物フィードバックについて動的制御・ニューロコンピューティング・長期培養の3項目を研究した。 微生物ユーグレナ(和名、ミドリムシ)の密度や分布を光フィードバックで制御する実験を3種類のフィードバックアルゴリズムを用いて行った。密度制御においては仮想的なエリアへのリレーフィードバック制御と区分化エリアへの照射光強度の比例制御を試み、リレー制御ではオーバーシュートが大きくなりすぎるものの、光強度の比例制御はうまく働くことを明らかにした。また、区分化エリアへ逐次パターン照射によって特定のエリアへのセルを集合させることができ、光感受性の差によってセル分離が実現できることを示せた。 微生物ユーグレナを媒介としたニューロコンピューティングを4都市巡回問題をターゲットにして検証し、最適解に到達できること、および複数の最適解の間の遷移が起こることを実証した。ユーグレナの光反応が単純なノイズオシレータとは違い、光照射エリアのセル密度が時間とともに徐々に減少すること、それが長期安定性につながることを示した。解の分布の偏りはプロジェクターから照射している2次元パターン光の偏光依存である可能性が高いと推測できた。 PDMS製の閉鎖マイクロ流路において問題となる水分蒸発を防ぐため、カバーグラスによるサンドイッチ構造とスペースを水で満たす方策を考案し、2週間以上の長期培養を可能とした。長期培養においてユーグレナの活動度はサーカディアンリズムを示した。2つの独立した培養系の間に人工的なフィードバックによって相互作用をもたらすためには、光照射を制御する2台のコンピュータ間でデータ交換を行えばよいことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、生物系の時間発展システムに物理的なフィードバックを与える複合システムを構築することにより、今までバイオ工学にもシステム工学にも含まれていなかった「潜在的に方向性をもった時間発展揺らぎ」を取り上げ、通常の制御システムの概念を越えた「潜在的根本的な方向性をもった時間発展揺らぎの顕在化」を目標としている。複合システムの構築は完了しており、方向性をもった時間発展揺らぎが観測されつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
光フィードバックの発展性を追及するため、次の項目に取り組んで行き、最終的に別種の微生物との人工的な共生や棲み分けの実現を目指す。これまでの光オンオフに替えてアナログフィードバックによるニューロコンピューティング動作を検証する。青色光に対するユーグレナの忌避反応がどのように変化していくのかを照射スイッチングを繰り返した場合の適応の観点より調べる。2つの独立した培養系の間を人工的に光フィードバックで結合しその結合ロジックを工夫することによって共存関係や棲み分けが可能かどうかを調べる。光に反応する別種の遊泳性微生物を導入し、ユーグレナとの共生や棲み分けを光フィードバックによって実現することを目指す。
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Research Products
(8 results)