Research Abstract |
ユーラシア大陸地下には,広く岩塩層が堆積していることが知られる.地層褶曲などにより岩塩層が比較的地表近くまで迫出している場合には,表層地下水にまで塩分が含まれていることが多い.典型的な事例をタイ東北部(内陸)に見ることができる.乾期,雨期の乾湿繰返しに伴って地表面への塩の析出と塩害に伴う農業生産の低下を引き起こしている.一方,東南アジアの国々では,製紙業から排出されるPS(ペーパースラッジ)や浄水場発生汚泥の処理は深刻な環境問題となっている.このような汚泥を1300度程度で焼くと,微細な多孔構造を持つ安定した多孔質材とすることができる.本研究課題は,タイ東北部をフィールドに,この多孔質材料を塩害防止・対策に用い,塩害防止と農耕地保全に役立てることを目的とし,1.水収支の狂いによる塩分析出シミュレータの高度化,2.タイ東北部で計測された塩害,地盤変状の解析,3.PS焼成材,浄水場排出焼成材の力学特性の把握,4.塩害防止,農耕地保全の構造体の提案を行おうとするものである.平成21年度は,研究実施計画に従い,数理モデルの体系の高度化と整備,実地フィールド情報の収集・分析,多孔質セラミック材の力学特性の把握を実施し,地盤環境シミュレータを開発し,塩害過程シミュレーションを開始している.このような技術体系の構築は,地盤工学が,土木分野における構造物の設計や施工に役立たせるだけでなく,農学,理学との相互補完型の学際連携を可能とし,地球環境問題への積極的な貢献をはたせるものと期待できる.
|