Research Abstract |
ユーラシア大陸地下には,広く岩塩層が堆積していることが知られる.タイ東北部(内陸)では、大陸移動前には赤道下の海底であった場所が,プレート移動と地盤隆起に伴って高濃度塩分の集積による岩塩層となった.しかも,地表面下約100mから,浅いところでは約40m深にあって,森林伐採以降の農耕地開墾において,乾期,雨期の乾湿繰返しに伴って地表面への塩の析出と塩害に伴う農業生産の低下を引き起こしている.さらに,細る農業収入を補うために,塩分を含んだ地下水を人為的に汲み上げ,塩田を成して塩を生産している.地下水の汲み上げは深刻な地盤変状をもたらし,塩田で不要となった塩水は農業潅概路に放出され,塩害を深刻化させている.一方,我が国も同様であるが,特に,東南アジアの国々では,需要の高まる製紙業から排出されるPS(ペーパースラッジ)や浄水場発生汚泥の処理は深刻な環境問題となっている.このような汚泥を1300度程度で焼くと,微細な多孔構造を持つ安定した(有害金属などがガラス質で強固に密閉された)多孔質材とすることができる.この多孔質材はレキ材としての透水性と微細多孔構造ゆえの高い保水性を持つ材料となる.これを塩害防止・対策に用いることも目的としていた.本研究は,大きくは次の内容からなる.基礎研究に基づき,有限要素法を用いた塩害過程シミュレータを高度化・整備した.これを用いて,塩害防止・農耕地保全構造体の検討を行った.この時,塩害防止・農耕地保全に環境汚泥のリサイクル材(焼成多孔質セラミック材)を用いて,環境負荷の軽減も同時に図った.以上の成果に基づき,実地フィーシビリティーの検討,経済性の検討を行い,その成果を,2011年11月(洪水被害のため2012年3月に延期・開催)にタイ・パタヤで開催される国際会議にて発表し,討議した.
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