Research Abstract |
本研究では海水環境下に置かれる石灰・セメント混合処理土の軟化現象を解明するために,海水に浸漬させた混合処理土の物理的,化学的特性,ならびに力学的特性を詳細に分析した.海水浸漬・浸透を受ける処理土は,海水との接触面から内部に向かって,固化成分であるカルシウムの減少を伴いながら軟化する。新たに開発した小型コーン貫入試験ならびにカルシウム含有量分析を行って,劣化状態,遷移状態,健全状態の3つの状態に分類することができる.これら3つの状態の間隙構造は,間隙体積量は等しいが間隙径分布が異なる.すなわち,軟化の進行に伴い,1μnの間隙径を境界に,それよりも小さい間隙径の体積が減少し,それよりも大きい間隙径の体積が増加する}よって,処理土の軟化現象は物理的には体積の増加ではなく,間隙径分布の変化で引き起こされる. 間隙径分布の変化はカルシウムの溶出による水和生成物の変質,減少が主な原因である.処理土中に海水が浸透すると,海水中のマグネシウムがブルーサイト(Mg(OH)_2)となって沈殿する.その時に,間隙水中のpHを低下させ,水和物を構成するカルシウムの溶出を促進させることとなる.したがって,海水環墳下の石灰・セメント混合処理土の軟化現象は,処理土中への海水浸透による水和生成物の溶解,それに伴う処理土内部の構造変化によって生じる。 本研究で実施した一連の実験結果から,混合処理土の軟化速度は固化材量や海水の濃度,特にマグネシウムの濃度に左右されることを明らかにした.この軟化速度は,コンクリートの中性化進行モデルと類似しており,極めてシンプルな近似式で表示できる. 本研究で海水環境下の混合処理土の軟化現象はほぼ理解されたと考えられる.本成果は処理±:の適切かつ合理的利用や耐久性の評価手法の開発に大きく貢献できると考える.
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