Research Abstract |
社会資本の形成に重要な役割を果たす道路や鉄道,各種プロジェクトの敷地造成工事では,盛土や抗土圧構造物などの各種土構造物が構築される.社会資本の長寿命化が各方面で検討されているが,土構造物においても,それに関する技術の高度化が必要である.本研究は,土構造物の長寿命化のための地盤補強技術の高度化に向けて,1)補強材に作用する荷重(引張り力)の解析法,2)補強材の耐久性とクリープ特性を短時間で迅速に評価する方法,3)補強土構造物の使用限界状態の照査法の確立を目的に一連の検討を行った.平成22年度における研究成果として,上記1)に関しては,研究実施者らがこれまで構築してきた実スケール補強土壁の挙動データベースを拡張し,施工後における雨水の浸透や地下水位の変動の影響が補強材力に及ぼす影響の評価法を確立した.さらに1)に関して,昨年度開発した遠隔操作型計測システムを用いて得られた補強土構造物の1年間の計測データの解析を行い,システムの有用性と著者らの提案する補強材力推定モデルの妥当性を明らかにした.2)に関しては,力学作用,化学作用,施工時の損傷の複合的要因が補強材の長期安定性に及ぼす影響を調べるための装置の動作確認を行い,基礎データを取得した.施工時の損傷によるジオグリッドの引張り強度の低減に関する評価法として,材料表面の粗度解析を応用する評価法を確立した.3)については,土構造物の変形挙動に関するデータベースを構築し,使用限界状態の設計についての基礎データを整理することができた.さらに,1)と2)の成果をもとに,補強土壁の内的安定に関する部分安全係数の試算を行った.以上の成果を,5件の雑誌論文(内5件査読付き),8件の学会発表(内1件招待講演)で公開した.
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