Research Abstract |
本年度は,これまでの分析結果を踏まえた応用的な位置づけとして,昨年度に開発した遅延連鎖シミュレーションシステムを用いて,相互直通運転を実施する実際の営業路線をケーススタディに具体的な遅延対策効果の計測を行った.また,シミュレーションにより得られた結果から,現状の遅延対策および今後の都市鉄道整備において,示唆的な情報を得ることができた. H21年度に行った「遅延の発生・波及の定量的分析」の結果を踏まえて,H22年度では「遅延の発生・波及の現象を再現するシミュレーションシステムの開発」を実施している.本年度前半はこのシミュレーションシステムを用いて,旅客流動特性からi)遅延の発生要因を明示し,線路閉塞や信号設備による路線の輸送力と高頻度運行を行う列車1本1本の動的な分析から,ii)遅延の波及の現象を明示した.さらに,相互直通運転区間を分析対象とし,iii)相互直通路線へ及ぶ線的な遅延の連鎖の現象を明示した. シミュレーションモデルを用いた上記の分析は,遅延の発生と波及のメカニズムを明らかにし,これにより,遅延の発生抑制,発生した遅延の波及・連鎖の抑制,遅延発生状態からの早期回復等の検討が可能となる.そこで,本年度後半では高頻度運行に伴う列車遅延に対して,より効率的な施策の検討を実施し,制度的,技術的な面から課題を確認するとともに,列車運行方式と施設整備の双方から具体的な解決方策の検討を実施し,その効果について計測を行った.対策のメニューは,大規模な施設整備を伴わない列車運行方式の導入,ターミナル駅の配線設備の増強,部分複々線化等の路線容量拡大,ワイドドア車両の導入などである.これらの分析結果から,列車の運行管理,閉塞区間の見直し,追い越し施設の整備などの方策について総合的な実施を図ることでより対策効果が大きくなること等が示唆された.
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