Research Abstract |
本年度は,研究計画に沿って,以下の研究を実施した。 1)これまでに構築したGISプラットフォーム上のダウンスケーリング手法を用いて1995年,2000年,2005年のそれぞれの高精細大気汚染物質排出量マップを,SO2,NOx,CO,NMHIC(非メタン炭化水素),SPM(BC,OC,土壌粒子,硫酸塩等),CH4, NH3を対象として作成した。特に大気汚染の健康影響が深刻な中国に着目して,大規模排出源データベースの整備,地方行政区別の社会・経済データの整備,土地利用・交通網などのGISデータの整備によって,詳細な排出量分布図の作成を行った。 2)排出量の詳細推計において,空間的に詳細なダウンスケールを実施するためには,人口,産業立地,土地利用,交通網などの将来動向を予測する必要がある。本年度は,人口移動モデルなどの基本設計を行うとともに,大気汚染物質の主要な排出源となる交通モデルに関して,国際統計,国別統計データなどの交通に関連する様々な情報を利用して,各国の交通需要量算出に必要なトリップ原単位や機関分担率などのパラメータを推計する手法を構築した。また各国の交通量に関する統計データを整合的に調整するツールの開発も行った。 3)3次元の大気化学輸送モデルを用いて濃度分布を計算し、それを東アジア地域に点在する地上常時観測データや衛星観測データと比較することで、排出源データの妥当性、ダウンスケーリング手法の妥当性を検証した。三次元の大気化学輸送モデルには、全球化学輸送モデルと領域化学輸送モデルの両方を利用した。衛星観測データには1996年から2011年までのGOME, GOME2, SCIAMACY, OMIのデータを利用して,今年度はNO2のカラム濃度と排出量データおよびそれを用いた全球モデル計算の結果を比較した。
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