Research Abstract |
本研究では,尿中のリンを、ストラバイトを形成することを通して回収し,ストラバイト中の微量汚染物質の調査を行った.まず,代表的な微量汚染物質として10種類の医薬品(amoxycillin, carbamazepine, erythromycin, furosemide, atenolol, ibuprofen, norfloxacin, trimethoprim, tetracycline, acetylsalicylicacid),と1個の環境ホルモン(17β-estradiol)を選定し,人工尿および人尿を用いて実験を行った.また,全ての選択した医薬品および環境ホルモンの測定のために前処理やLC/MS/MSの分析方法について最適化を行った.ストラバイトを形成後,tetracycline, erythromycin, norfloxacinはストラバイト中に残存し,特にtetracyclineは高濃度で残存していることがわかった. 尿から回収されたストラバイト中の医薬品量とリンの回収効率に及ぼすMgの添加量の影響を調査した結果,ストラバイト形成に最適なMg:Pのモル比は2:1であることを示している.次に,回収されたリンの回収効率や医薬品量へのpHの影響について実験を行った結果,pHの上昇は回収されるストラバイトの量およびリンの回収効率を増加させることがわかった.さらに,貯留時間の影響の調査を行った.5-15日間の貯留時間後の人工尿および人尿のpHはストラバイトの結晶化に適した9.18-9-24であった.5日間の貯留時間は,ストラバイト中に含まれている医薬品量が低いといった最適な条件であった.最後に,人間の体より直接排泄された医薬品類および環境ホルモンの挙動を把握し,ストラバイト中に含まれる医薬品類量を最小化する技術を提案した. 以上より,本研究では高いリン回収効率と人尿から回収されたストラバイト中の医薬品量を最小化する最適条件が得られた.これらの結果は,農業の発展,人尿からのリン回収効率の改善,より良い公衆衛生に寄与するものであると考えられる.
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