Research Abstract |
水環境中における抗生物質等の医薬品類の存在は,人の健康問題と関係する薬剤耐性菌の発生にも関与することが懸念され,水環境中における医薬品類の動態や薬剤耐性菌による水系汚染の実態を明らかにすることは重要であると考えられる。そこで本研究では,水環境中における抗生物質および抗ウイルス剤の動態を明らかにするとともに,薬剤耐性菌による水系汚染を明らかにし,抗生物質濃度や下水処理水,畜産排水等の流入と薬剤耐性菌の存在との関連について考察することを目的とする。平成22年度は,抗生物質および抗ウイルス剤の水環境中での分解性を検討するとともに,抗生物質および抗ウイルス剤の水生生物に対する毒性影響の評価を行った。 抗生物質および抗ウイルス剤の水環境中での分解性については,淀川流域にある支川の小区間で調査を行って医薬品類の分解速度を推定したところ,ニューキノロン系抗生物質であるCiprofloxacinやLevofloxacin,その他の抗生物質のTetracyclineやNalidixic acidについては,1次減少係数が0.1を上回る高い値が示された。これらは太陽光照射実験でも高い光分解性が見られた物質であり,分解には光分解が寄与している可能性が考えられた。また,水生生物に対する毒性影響について,藻類,ミジンコ,細菌を用いた生態毒性試験を行った結果,3種の生物の中では抗生物質は全体的に藻類に対する毒性が大きかった。しかし,Triclosanについては,藻類,ミジンコ,細菌の3種の生物全てに強い毒性が見られた。一方,タミフルなどの抗ウイルス剤について生態毒性試験を行った結果,抗生物質と比較すると,その水生生物へ対する毒性は強くないことが明らかとなった。
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