2009 Fiscal Year Annual Research Report
建築物の地震時損傷制御を目的とした同調粘性マスダンパー制振システムの開発
Project/Area Number |
21360260
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
五十子 幸樹 Tohoku University, 大学院・工学研究科, 准教授 (20521983)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 範夫 東北大学, 大学院・工学研究科, 教授 (50250725)
|
Keywords | 同調粘性マスダンパー / 制振 / 動吸振器 / Tuned Mass Damper / 定点理論 / 最適設計 |
Research Abstract |
同調粘性マスダンパーという、既往の機械振動制御に用いられている動吸振機に類似した機構を有する装置が、建築構造物の地震時における損傷を軽減する目的で考案されたが、その基本的性質は未だ明らかでない部分が多かった。本年度の研究では、当該制振装置の基本特性を理論的に明らかにすると共に、設計方法の確立と、縮小模型や実大ダンパーを用いた振動実験による検証を行った。本年度の研究で得られた主な成果は下記の通りである。 1.定点理論に基づいて最適設計された同調粘性マスダンパーの振動応答低減能力を明らかにするため、従来の粘性ダンパーや粘性マスダンパーとの比較を行い、当該ダンパーは付加振動系が粘性部変位を主系変位の数倍に拡大することにより大きなエネルギー吸収能力を発揮することを明らかにした。 2.定点理論は共振曲線のピークを最小化する、いわゆるH∞制御であるが、これが必ずしも地震時応答低減を目的とする建築構造物に対する適切な設計法とは限らないため、地震時最大応答を直接的に最小化する設計手法を数理計画法に基づいて提案した。 3.当該ダンパーが建築構造物の振動応答を有効に低減するためには、大きな付加質量を必要とする。その付加質量を確保するために、既往の粘性マスダンパーに回転錘を付加し、さらに回転増幅機構のボールネジ部のリード長を短くするなどの工夫により実質量の2000倍を超える質量増幅機構を設計し、実大のダンパーを製作した。また、実大振動実験により、この実大ダンパーが設計通りの性能を発揮することを確認した。これは、実建物に提案ダンパーが適用しうることを証明した点において非常に重要な意義を有している。
|