Research Abstract |
建築プロジェクトにおいて,リスクはプロジェクト全体を通して発生し,かつ様々な主体が関係している。プロジェクト・リスクは災害に加えて,品質やコスト,工事遅延等が存在し,さらに最近では騒音・土壌汚染等の環境問題,救急車の出動に至る重大な事故の発生,完成した建築物の瑕疵や維持管理に対するクレーム・訴訟等,ますます多様化している。とりわけ,超高層集合住宅のプロジェクトでは,超高層であるという理由から,長い工期を要し,通常の集合住宅よりも概して高い付加価値を持った建築物を供給する必要がある。さらに,分譲である場合には,完成物件の所有者である入居者からの直接的クレームが多数管理会社に寄せられることになる。今年度は,関係者のヒアリングによってこのような現状を把握したうえで,建築プロジェクトにおいてプロジェクト全体(企画から竣工後まで)を通して,かつ複数の主体にまたがってリスク分析を行うこととした。しかし,従来,これらのリスク事象と設計基準等は別々のソフトウェアやウィンドウで参照されており,関連づけるために手間を要していた。本研究では,リスク事象と設計基準等の情報リンクを設定し,設計者などが体系的に把握できるようなリスクマネジメントシステムを開発する。今年度の段階で試作システムを開発し,これを用いて,建築企画,建築設計,建築施工,維持管理に関与する事業者間でリスク情報を共有・更新し,どの段階でどのような対策を講じるべきかという改善方法を各主体に向けて発信することにより,今後の同種のプロジェクトに関わるリスクを低減することを可能にした。
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