Research Abstract |
今年度は,超高層集合住宅の企画,設計,施工,維持管理のライフサイクルを通じてリスク事象を収集・整理し,設計基準等の情報リンクを設定して,設計者などがリスク事象の因果関係を体系的に把握できるような,リスク情報共有システムを開発した。まず,竣工後のリスク情報のうち,建築プロジェクトに携わる主体にとって関連の深い「裁判に関する事例」,裁判には至っていないが,生産プロセスに起因する「生活事故に関する事例」について調査を行った。次に,必要な情報を効果的に検索するシステムについても検討を行った。そして,リスク対策のテキストについては,検索・集約の結果を事典のようにWeb上に公開し,事業主,CMr等の担当者が編集・更新できるようにした。 本研究では,Webコンテンツ管理システムwikiを用いた。wikiは複数人が共同でWebサイトを構築していく利用法を想定しており,閲覧者が簡単にページを修正したり,新しいページを追加したりできるようになっている。編集者をパスワードなどで制限したり,編集できないよう凍結することもできる。今年度は,livedoor wikiを用いて,システムを開発・運用した。超高層集合住宅の生産プロセスに関与し,リスク事例情報を知らせるべき対象は,企画,設計,施工,維持管理の各段階で異なっている。各段階の業務内容は,主に各主体の有資格者が,業務を行う上で参照すると考えられる指針に記載されており,ここにフィードバックできれば有効ではないかと考えられる。集合住宅の企画を行う主体は,事業主(マンションデベロッパー等)と考えられるが,必要な資格や,共通の指針は見当たらない。各企業独自の指針は,営業ノウハウとして一般には開示されていない。したがって,知識のオープンな共有をどこまで進められるかが課題となる。
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