2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21360309
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
森 博太郎 Osaka University, 超高圧電子顕微鏡センター, 教授 (10024366)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒河 一渡 大阪大学, 超高圧電子顕微鏡センター, 准教授 (30294367)
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Keywords | 相変態 / 状態図 / 電子顕微鏡 / 微小系 |
Research Abstract |
ナノ粒子は一般に何らかの支持基板の上に乗せて利用あるいは観察・評価される。したがって、ナノ粒子の相安定性に及ぼす基板の影響を明らかにすることは重要である。これまでに当研究代表者らは、透過型電子顕微鏡その場観察実験により、950Kに保たれた黒鉛基板上の直径9nmのAg粒子は、結晶性を保ったまま熔融を生じることなく昇華によって縮小し、遂には消滅してしまうことを見出している。そこで本年度は、そのような特異な現象が、黒鉛とは異なる基板に支持されたAg粒子においても生じるのか否かを明らかにするために、高温に保持されたアルミナ基板上でのAg粒子の挙動を調べた。 実験結果は次の通りである。(1) 859Kにおいて、直径約8nmのAg粒子の内部には、結晶であることを示す格子縞が観察された。(2) しかし、863Kにまで基板を加熱すると、粒子はファセットを失い、粒子内部は結晶性を示す格子縞が消失するとともに一様なコントラストとなった。これは、粒子が熔融し液相に変化したことを示す。(3) 熔融した粒子は、液相のままで縮小し消滅した。 基板の違いによるAg粒子の縮小・消滅過程の違いの要因は、以下のように考えられる。アルミナ基板の場合、Ag中のAlの溶解限度は、液相の方が固相よりも高い。したがって、熔融に際しては、液相の核におけるAl原子の濃縮が必要である。これは、基板からのAlの供給により、容易に達成される。これに対して、黒鉛基板の場合は、Ag中のCの溶解限度は、液相の方が固相よりも極めて低い。したがって、液相の核におけるC原子の排出(Agの純化)が必要となる。融点近傍における固相AgのCの濃度は飽和に達しているから、局所領域におけるCの除去が起こるためには、強い濃度揺らぎが起こらねばならない。しかし、ナノ粒子という微小系においてそのような揺らぎの起こる頻度は極めて低い(例えば、"An introduction to probability theory and its application", W. Feller, 1957)。このことが、黒鉛基板上でのAg粒子の熔融を困難なものにしていると考えられる。
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