2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21360309
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
森 博太郎 大阪大学, 超高圧電子顕微鏡センター, 特任教授 (10024366)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒河 一渡 大阪大学, 超高圧電子顕微鏡センター, 准教授 (30294367)
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Keywords | 相変態 / 状態図 / 電子顕微鏡 / 微小系 |
Research Abstract |
合金の共晶温度が合金粒子サイズの減少に伴い低下することは、以前より知られている。しかし、共晶温度と粒子サイズの間の定量的な関係は調べられてこなかった。そこで本年度は、単純共晶系のAg-Pb合金ナノ粒子を取り上げて、その共晶温度と粒子サイズの関係を高分解能電子顕微鏡内加熱その場観察法によって実験的に明らかにするとともに、熱力学計算によって評価し、両者の結果を比較した。 実験では、カーボン膜上に蒸着されたAg-Pb合金ナノ粒子(平均組成:Ag-70wt.%Pb)をまず600Kに加熱し、その回折図形から、この温度において系がAg-Pb液相+Ag固相の二相共存状態にあることを確認した。その後、系を冷却速度5×10^<-2>K/sで徐冷し、Pb固相が現れる温度を以て共晶温度とした。二固相共存状態にある粒子の高分解能像から、Ag固相およびPb固相間には特定の方位関係が存在することが示唆された。測定された共晶温度は、粒子半径5.5~11nmの範囲において、粒子半径の逆数に比例して減少した。 熱力学計算では、共晶温度においては、(a)液相および固相粒子の単位質量あたりの自由エネルギーが互いに等しい、(b)固相の自由エネルギーは、AgおよびPb固相の化学ポテンシャルの線形結合で表される、(c)液相および固相粒子の組成はバルクのそれと等しい、という条件の下に、共晶温度を粒子のサイズおよび表面張力の関数として解析的に表した。 計算で得られた共晶温度は、変態の駆動力が消失する条件下での変態に対応する温度であるために、実験で得られた共晶温度より少し高い値となった。しかしこの点を考慮すると、両者はよく一致したと言える。このように、本研究では、実験・理論的に初めて、合金ナノ粒子の共晶温度の粒子サイズに対する関係を定量的に明らかにすることに成功した。
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