2010 Fiscal Year Annual Research Report
無容器過冷却凝固法による新しいマルチフェロイック物質の探索
Project/Area Number |
21360365
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
栗林 一彦 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (70092195)
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Keywords | マルチフェロイック物質 / ガスダイナミック浮遊炉 / 過冷凝固 / 酸素ポテンシャル / 相選択 / 希土類・遷移金属酸化物 |
Research Abstract |
代表者らは、これまでにペロブスカイト構造が安定なRFeO_3(R:希土類元素)においても、イオン半径の小さいLu, Yb等では、過冷したメルトからの急速凝固により、磁性に加えて強誘電性(マルチフェロイック性)が期待される空間反転非対称の構造の化合物(h-RFeO_3)が得られることを報告してきた。しかしながら、ほとんどの場合、磁性は反強磁性であることから、実用的なマルチフェロイック物質とするには、強磁性であることと併せてT_c(キュリー温度)が少なくとも室温以上であることが不可欠となる。この点から本研究では、h-LuFeO_3とFe_3O_4のハイブリッド構造となるコンポジットの生成を試みた。実験は、LuFe_2O_<4+x>と、Feの一部をMnに置換したLu(Mn_xFe_<1-x>)_2O_<4+y>^*を試料に、酸素分圧(Po_2)をパラメターにして、ガス浮遊炉(ADL)による過冷凝固を行った。その結果、Po_2~10^4Paにおいてh-LuFeO_3を初晶とするFe富化相との共晶組織が得られた。同組織をVSMにより調べたところ、~850Kにおいて顕著な磁気変態を示したことから、このFe富化相はFe_3O_4、あるいは(Mn_xFe_<1-x>)_3O_4であることが強く示唆される。すなわち強磁性と強誘電性のハイブリッド構造の実現への可能性が明らかとなった。この点から、次年度では、R(Mn_xFe_<1-x>)_2O_<4+y>において希土類元素の選択、すなわちYの適用およびPo_2並びx, yの最適化を指向して本研究を総括する。 ^*Feの一部をMnに置換した理由は、Fe_3O_4は酸化物としては電気伝導度が大きく、マルチフェロイック性を損なう恐れがあるためである。
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