2011 Fiscal Year Annual Research Report
無容器過冷却凝固法による新しいマルチフェロイック物質の探索
Project/Area Number |
21360365
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
栗林 一彦 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (70092195)
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Keywords | マルチフェロイック物質 / ガスダイナミック浮遊炉 / 過冷凝固 / 酸素ポテンシャル / 相選択 / 希土類・遷移金属酸化物 |
Research Abstract |
筆者らは、これまでにRFeO_3(R:(重)希土類元素)において、大きく過冷したメルトからの急速凝固により磁性と誘電性を兼ね備えたマルチフェロイックな性質を示す六方晶相(h-RFeO_3)が準安定相として生成することを明らかにしたが、同相の磁性はほとんどの場合、反強磁性であり、しかもその磁気変態点は~200Kと低く、実用性としてはこの点が障害になると思われた。これを改善するには、単相組織に替わって強磁性相、特にFe_3O_4とh-RFeO_3のナノコンポジット化が有力な方法と考えられることから、23年度は組成および生成条件を検討することにより、強磁性と強誘電性を兼ね備えたマルチフェロイックコンポジットの創製を指向した。このような観点から、先ず過冷凝固したRFeO_3の断面組織写真を詳細に調べたところ、強誘電性のh-RFeO_3が初晶として粗大晶出し、後段になって強磁性のFe_3O_4相とh-RFeO_3が微細な共晶として現れることが示唆されたので、Fe_3O_4とh-RFeO_3のナノコンポジット化を図るべく、組成と凝固条件を検討した。その結果、組成としてはFeの一部をMnに置換したLu(Mn_xFe_<1-x>)_yO_<3+z>(x:0.33,y:3+a,z:6+b)においてサブミクロンレベルの共晶組織が得られることを示し、併せて六方晶相の安定性を評価する指針として、h-RFeO_3を構成するイオン半径の幾何学的関係の考察から(r_R+r_O)/√2(r_<Fe>+r_O)≦0.87(r_R:R^<3+>のイオン半径、r_O:O^<2->のイオン半径、r_<Fe>:Fe^<3+>のイオン半径)が安定性の条件になることを提唱し、戦略的に入手が困難になっている希土類元素に替わって、Sc、Bi等の利用の可能性を示した。
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