Research Abstract |
固体炭素資源の熱分解によって生成する炭化物(チャー)は,タール発生完了時(石炭の場合,600℃程度,バイオマスでは550℃程度)には軽質ガス前駆体としての官能基を相当量保持する.残留官能基は,チャーがさらに高温まで昇温加熱される間に熱分解するが,このとき生成するラジカル種に対して水蒸気が効率よく接触すれば,従来の「官能基分解後の等温ガス化」の場合よりも大幅に高速な水蒸気ガス化が起こる可能性を見出した.本研究では,官能基熱分解が駆動する炭化物水蒸気ガス化を実験的に示し,これに対するinherentなアルカリ,アルカリ土類金属の触媒的影響を明らかにすることを目的とした.今年度は,官能基熱分解と水蒸気・チャー接触が同時に起こる条件下での迅速ガス化を実証すべく,褐炭,inherent金属除去(酸処理)褐炭,Na担持褐炭およびCa担持褐炭をドロップチューブ反応器において含水蒸気気流中,900℃で熱分解,チャーをin-situガス化する実験を実施した,Na担持炭およびCa担持炭の転換特性から,これらの迅速熱分解で生成した炭化物(初期チャー)のそれぞれ47%および82%(炭素基準)が,わずか2s以内に水蒸気ガス化したことが判明した.水蒸気ガス化の平均速度は0.16~0.29s^<-1>であり,別途求めた900℃における等温ガス化(脱揮発化後のガス化)速度の約70~100倍であった.このように,適切な条件下で進行する官能基熱分解駆動による迅速ガス化を実験的に示すことができた.ドロップチューブ内では,チャー粒子と気相の揮発成分が化学相互作用する.金属除去褐炭の場合,揮発成分からの炭素析出によってチャーの見掛けガス化率が負になったが,Na,Ca担持褐炭から生成したチャー表面では,Na,Caの触媒的作用によって炭素析出を大幅に上回るガス化が進行した.本年度はガス化反応機構解明にも取り組み,触媒反応(炭素に関してゼロ次)および無触媒反応(一次)が並列的に進行するデュアルLangmuir-Hinshelwood機構を初めて提案,その妥当性を証明した.
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