2009 Fiscal Year Annual Research Report
大気圏突入飛行体の熱気体力学を応用した氷天体の極超音速アストロバイオロジー研究
Project/Area Number |
21360413
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 宏二郎 The University of Tokyo, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (10226508)
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Keywords | 極超音速 / 大気圏突入 / 高エンタルピー流体 / アブレーション / 風洞実験 / アストロバイオロジー / 氷天体 |
Research Abstract |
大気圏に突入する氷天体まわりの極超音速高温流れについて風洞実験および数値解析を行った。 風洞実験は東京大学柏キャンパスの極超音速風洞(マッハ数7、最高よどみ点温度約1000K)を用いて行い、彗星などの核を模擬するコア周りに球状の氷模型を製作する実験手法を確立した。淀み点領域では強い空力加熱によりアブレーションで氷が失われる一方、気流が急膨張する後方部分において、前方で発生した水分が氷柱を形成し、それらが重なり合うことでスカート上の構造物を作る現象が発見された。氷塊の直径は初期の球状態より増加し、空気抵抗も3倍程度に増加した。耐熱性コアの存在は前方部の氷が全て失われた後も残りの氷塊を保持する役割を有する。気流や氷塊の条件を変えた実験も行っており、これらの結果は、氷天体の大気圏突入軌道やアブレーションガス放出量などの推定に有用なデータとなる。 実験中のビデオ画像から各瞬間での氷の形状を推定し、その周りの極超音速流れに関する軸対称ナヴィエ・ストークス方程式の数値解析を行った。空気抵抗は実験結果とよく一致した。一方、アブレーションによる形状変化も追跡することのできる気体/液体/固体の三相を扱う統一解法コードの開発も進められた。相境界での大きな密度変化を安定に捉えるため、衝撃波捕獲だけでなく低マッハ数での精度も重要であり、二次元非粘性流のテスト問題からAUSM系のSLAUスキームが有望であることを見出した。 アブレーションを起こす大気圏突入氷天体周りの化学反応流れについて、原始地球大気の成分が二酸化炭素と窒素の混合であると仮定し、C,H,O,N元素による29化学種モデルを構築した。粘性衝撃層解析による試計算で、アブレーションで氷天体から失われる水の量に対し0.1%のオーダーで重要な生命前駆物質の一つであるHCNが生成されることが明らかになった。
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