Research Abstract |
今年度はまず各損傷形態と飛翔体速度との関係を実験的に明らかにし,データベース化を行った。次に,構成素材(炭素繊維と樹脂)の物性値(強度,弾性率,層間破壊じん性など)の違いが高速衝撃損傷挙動に及ぼす効果を汎用有限要素解析ソフト(Abaqus)を用いて調べた。高速衝撃吸収効果の高い物性の組み合わせを探索するために,物性値が損傷量,特に層間はく離面積と貫通限界速度に及ぼす効果を調べ,支配的な材料パラメータを明らかにした。この結果,層間破壊靭性が大きいほどまた層間せん断強度が高いほど層間はく離面積は小さいこと,繊維方向強度の増大が貫通限界速度の向上にとって支配的であることが分かった。第三に,粒子法(SPH法)により,クロスプライ積層板について,高速衝撃損傷挙動の二次元および三次元シミュレーションを行い,上記の実験結果とFEM解析結果と比較を通して,コードの妥当性を検証した。シミュレーションでは,実験結果と同様に,0°方向断面で,飛翔体球の衝突に伴う圧痕(クレーター),繊維破断,コーンクラックトランスバースクラックおよび層間はく離が再現された。90°方向断面においても上記の損傷に加え,スプリッティングが観察された。三次元シミュレーションは二次元シミュレーションより損傷領域が小さいが,損傷形態はほぼ一致した。以上により,粒子シミュレーションによって損傷進展をほぼ再現することができるようになった。最後に,3年間の研究成果を総括すると,CFRP積層板における高速衝撃損傷の定量評価法と耐衝撃性向上のための材料設計の指針が以下のように提案される:(1)層間はく離を最小にするには層間破壊靭性を向上させる,(2)貫通限界速度を増大させるには繊維強度を向上させる。
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