Research Abstract |
本研究は,精密な単独測位や新たな相対測位アルゴリズムの導出および日本上空での電離層遅延誤差,対流圏遅延誤差,衛星軌道誤差などを推定し,測位の補強データを利用者に提供するシステムの構築を試みることを目的としている.平成21年度は,下記のテーマに沿って研究を進め,研究成果を論文として公表,学会において口頭発表を行った. (1)広範囲,他利用者を対象とした誤差補正情報作成システムの開発:多数の電子基準点におけるGPS観測データに基づいて,測位誤差の要因である日本上空の電離層,対流圏の影響を推定するためのモデルを提案した.特に球冠調和関数を用いたモデルに基づく補正情報を利用することで,より精度の高い測位が実現できることを示した. (2)マルチパスの検出および除去アルゴリズムの開発:マルチパスは観測量に含まれる異常値として捉えることができ,本研究ではカルマンフィルタのイノベーション過程に対してカイ2乗検定,尤度比検定を用いる方法,観測量の線形結合に対してカイ2乗検定を用いる方法を提案し,観測量の異常を精度良く検出,除去できることを示した. (3)多周波観測データに基づく誤差補正アルゴリズムの開発:GPSのみならず各国において衛星測位システムが構築されつつある動向を踏まえ,本研究では,現時点で運用段階にあるロシアのGLONASSを利用した高精度単独測位アルゴリズムを提案し,精度の検証を行った.GPSのみの場合と比べて,測位精度は大きく向上しなかったものの,より多くの衛星を利用した頑健な測位を行えることを示した. (4)GNSSとINSを複合した測位アルゴリズムの開発:慣性航法(INS)とGNSSとの複合システムの構築には,非線形システムの状態推定を行う必要があり,本研究では各種の非線形フィルタや,それらを融合したフィルタを導出し,複合航法における有用性を検証した.
|