Research Abstract |
海水に磁場を印加し,磁場と垂直方向に通電を行うと,海水には導電性があるためローレンツ力が働く.一方,不導体である油には電流が流れないため,力が作用しない.この現象を利用し.海水と油を分離する装置の開発を行うことが本研究の最終目的である.この目的の実現のため,数値計算モデルを構築し,実際の分離装置と数値実験の比較を行いながら,問題点を分析し,分離装置の改良を行う研究手法を採用している.本年度は,数値計算モデルの構築に重点を置き研究を行った.これまで行われてきた海水に電磁流体力学を応用する研究では,海水を単純な導電性流体として取り扱っている.つまり,従来の計算モデルでは海水の電気伝導率が空間的・時間的に一様である.ところが,実際に,磁場中で海水に通電を行うと,海水中のイオンにはローレンツ力が作用するため,イオン濃度に偏りが生じる.さらに,海水に通電を行うことで,海水中で電気分解が起きる.このため,海水を時間的・空間的に電気伝導率が変わる液体として計算モデルでは取り扱う必要がある.このことに我々は気づき,海水の流体的性質にはナビエストークス方程式,海水中のイオン濃度については,ネルンストプランク方程式を採用し,分離装置中の海水を扱う計算モデルを新たに提案した.さらに,流路を流れる海水の電気分解ついて,海水に通電する電流値と海水の電位分布の実測値を数値計算モデルから得られた計算値と比較し,海水の電磁流体力学的性質をミクロな立場から扱う我々の提案モデルが妥当であることを実証した.現在までの研究で,この計算モデルを使った数値計算実験で,分離装置入り口や出口で発生する乱流について大まかな再現ができることがわかってきた.今後,より詳細な数値計算を行えば,問題となる乱流発生のメカニズムが明らかになり,乱流の抑制や制御が可能になると考えられる.
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