Research Abstract |
本研究は,船舶の排出物規制海域内では部分負荷の頻度が高く,かつ頻繁な加減速がないことに着目して,舶用機関では類例のないPCCI燃焼(Premixed Charge Compression Ignition)を適用し,後処理装置に依存しないNOx低減を目指している.具体的には,噴射初期に高く,後期には低くなる噴射圧を印加する噴孔と,噴射圧が初期に低く,後期に高くなる噴孔とを近接させ,各噴霧を重合させることで噴射方向と噴霧の分散を能動制御する手法を提案しているが,平成22年度には,本研究の要となる近接2重燃料弁による予混合気の形成に着手するとともに,急速圧縮膨張装置を用いて,その燃焼特性を検証した,先ず,可視化定容容器を用いて噴射率で重合噴霧を制御する手法の成否を検証し,噴霧の分散が制御されるとともに過濃な噴霧核の形成も抑制されるなど所期の効果が得られることを確認した.次に,急速圧縮膨張装置に近接2重針弁を装着して,早期噴射によってPCCI燃焼を発現させた.現在は,ライトサイクル油(LCO)と軽油との相違,近接2重針弁と通常噴射弁との相違について調査中である.また,重合噴霧の混合気形成と燃焼過程を数値予測するため,新たな液滴衝突モデルの構築にも成功したが,芳香族炭化水素に対する満足な素反応モデルが存在しないことが論文調査や学会での討議で判明したため,ベンゼンの反応モデルの使用に留めている.平成22年度も研究成果の公表に努め,多数の論文を発表したが,LCOの燃焼性評価と機関の障害発生との相関を統計的に調査した論文に対し日本マリンエンジニアリング学会から平成22年度学会賞,油水重合噴霧の衝突モデルの構築に関する論文に対し優秀論文賞を受賞するなど,部分的な成果であるにも拘わらず,本研究は国内外で高い評価を得ていることを付記する
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