Research Abstract |
本研究の最終目標は,一つの坑井で入気とガスの生産を行う同軸型石炭の地下ガス化(UCG)手法の開発を視野に入れ,AE/MS(Acoustic Emission/MicroSeismicity)計測により燃焼領域の可視化を行う安全で環境に配慮したUCG技術を確立することにある。そのために平成21年度には基礎研究として,(1)石炭の燃焼に伴う破壊過程およびAE発生メカニズムの解明,(2)石炭,夾炭層岩石の熱物性評価,および平成22年度に予定していた,(3)炭層模型供試体によるガス化実験を前倒しで行った。一部の基礎試験については,供試体の手配および試験装置の準備が遅れたため,当初の計画の順番を変更して実施した。その結果, 1,石炭に対するCO2レーザ照射実験により,照射スポットの周囲に溶融領域,灰化領域,熱分解領域が形成され,多くのAEは熱分解領域でのき裂発生に起因していることが,電子線マイクロアナライザ分析およびAE計測によりわかった。ガラス質の溶融領域が形成されると,燃焼が周囲へ拡大しないことがわかった。また,熱分解領域で発生するAEは,数値シミュレーションにより引張応力場での破壊に起因することが確認された。 2,石炭・夾炭層岩石の比熱,線膨張係数および熱劣化試験方法を確立し,釧路コールマインの石炭,頁岩,砂岩についてそれぞれの熱物性値を得た。しかしながら,高温環境下での変形特性や強度については,次年度に繰り越すことになった。 3,石炭の周囲をモルタルで円柱形に固めた供試体にリンキング孔を設け,底面から着火し燃焼実験を行った。その際の多点温度計測,AE計測により,石炭の燃焼速度や燃焼領域の温度勾配,生産ガス組成は供給風量に依存し,温度勾配に応じた熱応力で燃焼領域周辺が破壊することがわかった。 平成21年度の研究により得られた結果は,次年度以降に行う模型試験やシミュレータ開発の基礎になる。
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