Research Abstract |
本研究の最終目標は,一つの坑井で入気とガスの生産を行う同軸型石炭の地下ガス化(UCG)手法の検証と,AE/MS(Acoustic Emission/Micro Seismicity)計測による燃焼領域の評価に基づいた,安全で環境負荷の少ないUCG技術を確立することにある。最終年度の平成23年度には,UCG模型実験とUCGシミュレータ開発の継続,北海道の露天炭鉱にて小規模なUCG現場実験を行い,AE/MS計測による燃焼・ガス化過程の評価,回収ガスのエネルギ計算による同軸型も含めたUCGの実用可能性を検討した。また,これまでの知見を取り入れたUCGシミュレータの開発を行った。その結果,以下のことがわかった。 1. UCG模型実験により,石炭の単位体積当たりの発熱量は二つの坑井を用いるリンキング方式に対して同軸型では約20%低い結果になった。これは,同軸型では燃焼・ガス化領域が充分に拡大しないためであった。このことは,AE計測結果および試料の切断面の観察により,判明した。また,空気を注入した場合の発熱量の平均は約1MJ/m3であったが,純酸素を注入した場合は約7MJ/m3であった。 2. 北海道空知地方の露天炭鉱の露頭を利用して,数mの領域を対象にしたUCG現場実験を行った結果,UCG模型実験とほぼ同様の結果を得た。すなわち,リンキング方式に比べ同軸型では発熱量が低かった。しかしながら,諸外国のUCG現場における発熱量に比較すると,十分実用に供せる値であった。 3. 流体の移動のシミュレーション・アルゴリズムである格子ボルツマン法を用い,燃焼・ガス化領域での熱化学反応式および炭層や岩盤内のき裂分布を組み込んだ,2次元UCGシミュレータを構築した。これにより,炭層内のき裂の影響による各種ガスの流路,流量変化,および熱分布の変化が明らかになった。
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