2011 Fiscal Year Annual Research Report
固有安全性を有する自己フィードバック型核種閉じ込めセメントバリアの開発
Project/Area Number |
21360460
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
新堀 雄一 東北大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (90180562)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桐島 陽 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (00400424)
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Keywords | 放射性廃棄物 / 処分システム / 陰イオン性核種 / ヨウ素 / セメント系材料 / カルシウムシリケート水和物 / 収着 / 移行抑制 |
Research Abstract |
本研究では,放射性廃棄物の処分場の構築に多量に用いるセメント系材料が,処分場の閉鎖後において力学的な安定性を要求されなくなった後に,化学的なバリア材として働くことに着目している。セメント系材料の主成分であるカルシウムシリケート水和物(CSHゲル)は,次第にCa成分が溶脱することにより構造が不安定になり,そのことが結果的にヨウ化物イオン(I)などの陰イオン核種をも内包する能力を持つ。本研究では,地下の冠水状態を考慮し,非乾燥のCSHゲルとIとの相互作用について,陽イオン性核種(Eu)とも対比しながら検討した。本年度に得られた知見は以下にようになる。 (1)CSHへの収着に及ぼすヨウ化物イオン濃度の影響 本年度は,10mMのIを用いた。その結果,昨年度の1mMの場合以上にCSHゲルはヨウ化物イオンの安定化に寄与することが明らかになった。また,10mMのIを用いると,ろ液におけるCa濃度の増加およびSi濃度の低下が1mMのヨウ化物イオンの実験に比較して顕著になった。 (2)ハイドロタルサイト(LDH)へのヨウ化物イオンの収着 セメントに加えて天然鉱物のひとつであるLDHを骨材に利用するとヨウ化物イオンの安定化をより強固にすることが期待される。そこで,CSHとLDHとが共存する系において収着実験を行った。その結果,CSHゲルのみに比較してさらに高い収着性を確認した。 なお,Iの収着によるCSHゲルのラマン分光やFT-IRのスペクトルは昨年度の結果と大きな違いはなかった。 昨年度の結果および上述(1)の知見と併せて考えると,IはCSHゲルにおけるシリカの解重合を促し,余剰となったCaイオンを放出すると伴に,CSHゲルにおけるシリカの四面体構造の頂点(負に帯電)にCSH内に留まるCa^<2+>およびIが静電的に作用することによりヨウ化物イオンはCSHゲルに固定化されることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
処分場の冠水状態におけるCSHゲルは,Ca/Siモル比が1.0以下に劣化した場合も,ヨウ化物イオンの安定化に寄与することが明らかになった。またその効果はハイドロタルサイトのような陰イオン吸着材と競合しない。これらの知見は,非収着性核種として懸念された陰イオン核種について,変質・劣化したセメント系材料が陰イオン核種の移行を遅延させる効果を持つことに加えて,ハイドロタルサイトのような天然鉱物を骨材の一部として利用することによりその効果を高めることを意味している。これらの相補的な効果が明らかになったことは当初の計画以上の進展と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
処分場が沿岸部に設置される場合,地下水は塩水系になる。そこで,本研究によりこまでに示されたCSHゲルの陰イオン核種への化学的なバリア機能がNaイオン共存下においても十分に発揮されるかをより詳細に調査し,またEuなどの陽イオン核種との相互作用とも対比しながら,セメント系材料の有用性およびその活用方法を整理する。
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