2011 Fiscal Year Annual Research Report
高エネルギー核分裂片照射場でのウラン酸化物の損傷形成モデルの検証
Project/Area Number |
21360474
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
石川 法人 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力基礎工学研究部門, 研究主幹 (90354828)
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Keywords | 加速器 / 原子力エネルギー / 格子欠陥 / セラミックス / 放射線 |
Research Abstract |
本研究の目的は以下の通りである。高エネルギー核分裂片発生に伴うUO_2中の照射損傷メカニズムの検証を目標とする。具体的には加速器を利用したイオンビーム照射実験基盤の整備、UO_2中の基礎的照射損傷データの取得、高エネルギー領域での損傷予測法の構築、高燃焼度領域で問題となるリム組織形成メカニズムの検証を行う。核燃料の損傷評価・予測に必要な損傷形成モデルを提示することを目標とする。 今年度の成果の内容は以下のとおりである。UO_2焼結体試料に対して典型的な核分裂生成物であるXeイオンを、熱損傷なしに10^<16>ions/cm^2オーダーの高照射量領域まで照射し、照射試料の透過型電子顕微鏡観察を行った。その結果、特に高照射量領域での微細組織形成プロセスについて以下のことを明らかにした。(1)試料中にもともと存在する気孔が、照射方向に伸長する特殊な変形を起こす。(2)5×10^<14>ions/cm^2から転位網の形成が確認できる。(3)1.5×10^<16>ions/cm^2の高照射量領域では、1重畳照射に伴う転位の非熱的移動を示唆する亜粒界組織が形成される。 軽水炉燃料に見られる高燃焼度組織の主要な特徴である細粒化現象に関連して、転位網の再配置が結晶粒分割に至るいわゆる「結晶粒分割プロセス」が、合理的に高照射量での観察データを説明できることを明らかにした。 意義、重要性は、以下の通りである。 高精度で酸化物燃料の照射損傷を予測することは重要である。今年度の目標は、損傷領域が重畳する高照射量領域での微細組織形成モデルを検証することによって、合理的な予測モデルの枠組みを特定することである。本研究により、既存の損傷組織形成モデルのうち、結晶粒分割プロセスの可能性が高いことを強く示唆する観察データを得た。この成果により、高照射量での微細組織の形成に必要な要素(転位網、気泡密度、亜粒界の形成の有無など)を特定できた。予測モデルの枠組みを特定できたことで、今後の照射損傷プロセスの解明が効率的に進められることが本成果の意義である。
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Research Products
(5 results)