2009 Fiscal Year Annual Research Report
気候変動に対する高山植物群集動態の定量化とそのメカニズムの解明
Project/Area Number |
21370005
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
工藤 岳 Hokkaido University, 大学院・地球環境科学研究院, 准教授 (30221930)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金子 正美 酪農学園大学, 環境システム学部, 教授 (00347767)
星野 仏方 酪農学園大学, 環境システム学部, 教授 (80438366)
矢吹 哲夫 酪農学園大学, 環境システム学部, 教授 (50275484)
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Keywords | 気候変動 / 生物圏現象 / リモートセンシング / 植物 / 生態学 / 高山生態系 / 地球温暖化 / 土壌乾燥化 |
Research Abstract |
フィールドセンサス: 大雪山国立公園において、チシマザサの分布拡大が進行している場所でササの密度と気孔コンダクタンスの季節変化を計測した。同時に土壌水分と地温の季節変動を計測し、ササの分布拡大との関連性について解析を行った。その結果、ササの侵入に伴って蒸散による水分損失が増加し、土壌乾燥化が促進されることが確認された。また、乾燥化の指標となるハクサンイチゲの個体群動態を調べるために、土壌・積雪環境の異なる3個体群に調査プロットを設置し、成長、フェノロジー、生理活性の計測を行った。 衛星データによる広域センサス: ササ侵入地における広域土壌水分の空間分布を推定するために、L-バンドマイクロ波(PALSAR)の後方散乱係数(dB)を算出し、現地計測の土壌水分の間に相関モデルを確立させた。また、ALOS AVNIR-2、航空機ハイパースペクトルセンサーASTER TIRデータを用いて、ササ侵入域の斜面方位、傾斜度など微地形の特徴、地表面温度、及びササの分布を含めた地表面特性を抽出した。 航空写真による植生解析: 1977年の航空写真をデジタル・オルソ化して、2008年の航空機ハイパースペクトルのデータと重ね合わせ、土地被覆分類を行い、ササ、ハイマツと高山植物の分布域を特定し、1977年~2008年31年間のササの拡大面積を抽出した。 植生動態のモデル解析: ササの成育と土壌水分量の間のフィードバック効果を定式化した数理モデルを構築し、数値的解析を行なった。ササ相と高山植物相の2つの安定相が存在することが分かり、気温の上昇によりササ相への相転移が予測きれた。この相転移は"レジームシフト"の可能性があり、元の気温より更に低い気温になって初めて高山植物相の回復が可能であるというヒステリシスが高山生態系に存在すると考えられた。今後、モデルの中のパラメータを観測データから具体的に見積もることで、より具体的な解析を計画している。
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Research Products
(5 results)