2010 Fiscal Year Annual Research Report
新規同位体計測手法による沿岸海洋生態系における窒素負荷伝播と生態遷移過程の解明
Project/Area Number |
21370008
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮島 利宏 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (20311631)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永田 俊 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (40183892)
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Keywords | 海洋生態 / 環境 / 窒素負荷 / アミノ酸 / 安定同位体比 / 共生系 / サンゴ礁 / 物質循環 |
Research Abstract |
平成22年5~6月、8~9月および23年1月の3回にわたり亜熱帯浅海域生態系(石垣島・西表島沿岸)のサンゴ礁の現地調査を行い、海洋化学的観測と生物試料採取を実施した。生物試料採取は沖縄県漁業調整規則ならびに自然公園法に基づく規制に準拠し、必要な許可を得て実施した。本年度は特に(1)造礁サンゴ共生系におけるサンゴと共生藻の窒素交換関係、およびそれが環境条件、特に富栄養化により受ける影響、(2)海水中に最も多量に含まれる窒素化合物である溶存態有機窒素の動態とその微生物生態学的意義の解明について重点的な調査研究を行った。(1)に関しては、本研究課題の主要テーマであるアミノ酸の化合物別安定同位体比分析を組織的に適用し、アミノ酸プールを介した共生藻とサンゴとの栄養代謝関係に関して新しい知見を得た。また環境の富栄養化に伴い、サンゴ・共生藻とも従属栄養的窒素源への依存度が高まることが明らかになった。(2)に関しては技術的な制約から現在のところ化合物別ではなく溶存態有機窒素全体としての安定同位体比測定の方法開発に取り組んでいる。担当する予定の研究員の着任が遅れたため平成23年度に予算の一部を繰り越して研究を延長して行い、平成23年12月までに分析方法をほぼ確立した。今後、溶存有機物を含む非生物性有機物の化合物別同位体比分析の技術開発に取り組む予定である。またこれらの主テーマと並行して大気降下物由来窒素:負荷の影響に関する観測調査を実施し、硝酸イオンおよび水分子の各種安定同位体比と気象モデルを組み合わせて季節ごとの大気降下物窒素の負荷量評価と起源解析を行った。なお、交付申請書提出段階では、降雨による窒素負荷のモニタリングのため本年度に可搬型イオンアナライザーを導入する計画であったが、別予算により同様の装置が調達できることになったため本経費による調達は取りやめ、かわりに調査回数を3回として調査経費に使用した。
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