2010 Fiscal Year Annual Research Report
植物の小胞輸送~機能と分子機構の普遍性と独自性の解明~
Project/Area Number |
21370016
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上田 貴志 東京大学, 大学院・理学系研究科, 准教授 (10311333)
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Keywords | Rab GTPase / ARA6 / ARA7 / endosome / 膜交通 / 進化 |
Research Abstract |
真核細胞の中には,多くの機能的に分化したオルガネラが存在し,それぞれが細胞の生存から多細胞生物の高次機能発現に至る多様な階層において重要な機能を果たしていることが知られている.これら複雑なオルガネラ機能を各オルガネラを結ぶ輸送経路は,真核生物の進化の過程において徐々に獲得されてきたものであることが示唆されている.しかし,そのメカニズムはこれまでほとんど明らかにされていない.そこで,植物が進化の過程で独自に獲得した膜融合装置であるVAMP727について,進化細胞生物学的研究を展開した.VAMP727は,祖先型分子であるVAMP72のlongin domainlこ酸性残基に富んだ配列が挿入されることにより誕生したと考えられる.この挿入配列の起源を明らかにするため,基部被子植物,裸子植物,およびコケ植物のVAMP72遺伝子の塩基配列とEST配列の詳細な比較解析をおこなった.その結果,苔類においては,同一の遺伝子から挿入配列を持つものと持たないものの2種類の産物が転写されているのに対し,被子植物ではそれらが別々の遺伝子にコードされていることが明らかとなった.次に,シロイヌナズナを用いてVAMP727の挿入配列の人為的欠失の影響を解析したところ,この挿入配列が,エンドソームへのVAMP727の局在と液胞における膜融合に必須であることが明らかとなった.これらの結果から,R-SNAREの多様化を通じ,植物が進化の過程でいかに複雑かつ独自の膜交通経路を獲得してきたのかの一端を明らかにすることに成功した.
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Research Products
(6 results)