Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
沖津 進 千葉大学, 大学院・園芸学研究科, 教授 (70169209)
三宅 尚 高知大学, 自然科学系, 准教授 (60294823)
水野 清秀 独立行政法人産業技術総合研究所, 地質情報研究部門, グループ長 (20358097)
瀬戸口 浩彰 京都大学, 人間環境学研究科, 准教授 (70206647)
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Research Abstract |
本研究の目的は,中部~西南日本の最終氷期最寒冷期の植物化石,昆虫化石の分析と現生植物集団の遺伝子解析により,現在の湿潤気候下で優勢な生物群のレフユージアの分布と,乾燥・寒冷型植生の中でこれらの生物群がどのような群集を構成していたかを明らかにし,レフユージアの分布が現在の生物集団の遺伝構造や地理分布に与えた影響を明らかにすることで,北半球温帯域で最も生物多様性が高い地域である東アジアの生物多様性形成過程を解明することである.本年度は,宮崎県えびの市と人吉市,土浦市花室川,宇都宮市中里の最終氷期最寒冷期の植物化石群と,宮崎県四家の2万6千年前の植物化石群の分析を行った.その結果,宮崎県のAT前後の化石群からはコナラ属を含む落葉広葉樹が豊富な植生が復元され,九州南部の化石群では,本州の化石群に比べ落葉広葉樹が多いことが明らかになった.宮崎県南部四家のAT直下の化石群からは,微粒炭が多いことから火災による撹乱頻度が高く,そのような場所に発達した草地に,史前帰化植物として知られているキンエノコロが生育していたことがわかった.近畿地方から関東北部までの化石群を標高別に整理すると,低地にはカラマツ,バラモミ類,シラカバが多く,丘陵~山地域にはトウヒとダケカンバが多いことが明らかになった.奈良県五條市の晩氷期の化石群からは,針葉樹から広葉樹への変化が起きる直前の化石群で,針葉樹林に山火事が起こったことが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した地点の分析はほぼ予定どおり進行しており,熊本県人吉市など,新たな化石産出地点も見つかった.分析地点のデータを追加することで,最終氷期最寒冷期のレフユージアにおける温帯植物の分布状況がしだいに明らかになってきた.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,本年度までのデータを整理し,調査地点ごとや本研究課題のまとめとしての論文執筆を中心に進める.古植生中の温帯植物の分布量を復元する際に,化石群中の各分類群の量比と古植生中の分布割合との関係を考慮する必要が出てきた.そこで,今後は現生の林床や河道に堆積した植物遺体群を分析し,植物遺体群と周囲の植生との量的関係を明らかにするための,基礎資料の収集をあわせて行うことが必要になる.
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