Research Abstract |
本年度の研究成果の概要は以下のとおりである 1.Irrにおける酸化修飾部位と酸化活性種の同定昨年度,発現中の菌体内でのIrrの酸化修飾を5%以下に抑えることに成功したので,本年度はこの培養方法を用いて,ヘムや無機鉄の存在下におけるIrrの酸化修飾反応を追跡した.その結果,ヘムの添加時にはIrrの酸化修飾反応は進行したが,無機鉄のみの添加では酸化修飾が進行しなかった.つまり,外部から加えた無機鉄はIrrに結合しない,あるいは結合しても活性酸素種の産生を触媒しないと考えられた.しかし,還元条件下でヘムは,分子状酸素と反応して過酸化水素を産生するものの,過酸化水素はアミノ酸を酸化修飾するほどの酸化力を示さない.一方,酸化修飾反応中の吸収スペクトルを追跡すると,ヘムの分解が確認され,Irrに結合したヘムの一部は分解し,蛋白質内部で無機鉄を放出することが示唆された.したがって,この無機鉄は外部から加えた無機鉄とは異なり,Irrと結合して過酸化水素とFenton反応を行うことが考えられ,その結果,酸化力の高いヒドロキシルラジカルが生成し,このヒドロキシルラジカルが蛋白質部分を酸化修飾すると結論付けられた. 2.Irrへのヘム運搬蛋白質としてのフェロキラターゼ(FC)との相互作用の解明Irrではヘムの結合により酸化修飾反応が進行するが,細胞内では遊離のヘムはほとんど存在せず,何らかのヘム運搬蛋白質がIrrにヘムを供給すると推定される.本年度はこのヘム運搬蛋白質として,ヘムの生合成の最終段階でポルフィリンに鉄イオンを挿入するフェロキラターゼ(FC)に注目し,FC,無機鉄,ポルフィリン存在下でIrrの酸化修飾反応が進行するか検討した.その結果,FC,無機鉄,ポルフィリン存在下ではIrrの酸化修飾反応が進行したが,FC非存在下では酸化修飾反応は確認できず,FCによって生成したヘムがIrrを酸化修飾する,つまり,FCがIrrに対するヘム運搬蛋白質であることが示された.
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