2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21370059
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Research Institution | Tohoku Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
顧 建国 東北薬科大学, 薬学部, 教授 (40260369)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福田 友彦 東北薬科大学, 薬学部, 講師 (40433510)
伊左治 知弥 東北薬科大学, 薬学部, 助教 (80433514)
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Keywords | 糖鎖 / GnT-III / EMT / 糖転移酵素 / 細胞間接着 / E-カドヘリン / 細胞移動 / TGF-β |
Research Abstract |
これまでに細胞接着間のクロストークまたはEpithelial Mesenchymal Transition(EMT:上皮間葉移行)獲得の研究では、細胞内シグナル伝達や遺伝子の転写因子に研究が集中しており、糖鎖の役割に関する研究は殆ど行われていない。本研究は、申請者らの新規知見を踏まえ、これまでほとんど知られていない細胞接着・EMTによる糖鎖発現の変化とその意義を重点的に進めるところに最大の特色と独創性がある。細胞間接着と細胞-ECM間接着との相互作用は、初期胚発生や器官形成の過程だけではなく、がんの転移・浸潤の過程においても重要である。それらの過程はEMTと深く関わっている。EMTは、上皮細胞が間葉系様細胞に形態変化する現象であり、細胞間接着が弱くなる一方、細胞-ECM間接着が適度に促進されることが知られている。従って、細胞間接着により誘導された糖鎖遺伝子の発現とその機能解析は、細胞接着間のクロストークの理解に不可欠である。これまで、申請者らは、E-カドヘリンを介する細胞間接着により特異的にGnT-IIIが強く誘導され、その結果、インテグリンの機能が低下し、細胞移動が抑制されることを見出している(Iijima,et al,JBC.281:13038,2006;Akama,et al.Proteomics 8;3221,2008)。また、最近、興味深いことに、β-カテニン/Wntシグナル経路はGnT-IIIの発現を逆に強く抑制することも分かった(Xu,Q.et al.,JBC 286:4310,2011)。これらのことから、E-カドヘリンを介した細胞-細胞間の接着が糖鎖変化を通じて細胞-Ecm間の接着を制御できる可能性が示唆された。実際、GnT-IIIの強制的な発現は、TGF-βにより誘導したEMTを強く抑制することが明らかとなった(Xu,Q.,et al.JBC in press,2012)。それらの結果より、GnT-IIIの細胞移動やがん浸潤・転移に抑制的に働くという分子機構が明らかとなった。今後、動物モテルを用いて検証して行く。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年東日本大地震によって、実験動物室の空調が壊れたため、糖転移酵素欠損マウスを含めた糖鎖研究用の実験動物はほぼ全滅した。また、停電によって、-150℃の冷凍庫に保管した約50種類の糖鎖変異細胞株を失った。そのあと、失った実験動物や細胞株という研究基盤の回復に全力を挙げて取り組んできた。幸いなことに本研究課題の重要なポイントの一つである細胞間接着による誘導され,たGnT-IIIの働きに関しては、EMTの細胞モデルを用いて検証した。その結果、GnT-IIIの発現は、TGF-βにより誘導したEMTを強く抑制することが明らかとなった(Xu,Q.,et al.JBC16563-16574,2012)。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、細胞接着間のクロストークにおける糖鎖の役割を明らかにする一方、糖鎖による細胞増殖・分化、EMT獲得、がん転移・浸潤の制御とその機序を解明することを目標とする。今後、細胞レベルだけではなく、実駿動物を用いて重点的に進めて行きたい。
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