2009 Fiscal Year Annual Research Report
海馬の記憶シナプス可塑性の脳内ステロイドホルモンによる制御
Project/Area Number |
21370064
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川戸 佳 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 教授 (50169736)
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Keywords | 脳ステロイド / 海馬 / 記憶 / 女性ホルモン / 男性ホルモン / コルチコステロイド / シナプス / スパイン |
Research Abstract |
(作用研究:性ホルモンによるスパイン増減)(1)1nMエストラジオール(女性ホルモン)を海馬CA1領域に2時間作用させると、急性的に神経スパイン(後シナプス)が増加した。実験方法は海馬スライスの単一神経に蛍光色素を注入して可視化し、スパインの構造変化を共焦点顕微鏡像で追跡解析した。small-head(0.2-0.4μm),middle-head(0.4-0.5μm),large-head(0.5-1.0μm)と分類すると、特にsmall-headスパインが増加した。1個の神経にも数万個以上のスパインが存在するので、画像のヘステンソル解析とスケールスペース法に基ずくアルゴリズムを使用した、世界的に全く新しい自動解析プログラムSpiso-3Dを開発し、スパインの大量解析を行った。このスパイン増加作用は、エストラジオール補充療法によるAlzheimer型痴呆(神経シナプスの減少)の改善機構の分子論的な根拠を与えるものである。エストラジオールは脳が独自に合成することを発見しているので(Kawato et al., 2002 ; Hojo 2004)、エストラジオールは脳由来の神経スパインの急性的成長因子であることがわかった。 (2)一方、男性ホルモンであるテストステロンとジヒドロテストステロン(DHT)10nMもスパインを増加させることを発見した。エストラジオールと異なり、10nM DHTはlarge-headスパインを増加させたが、テストステロン10nMはsmall-headスパインを増加させた。選択的阻害剤を用いることで、スパイン増加がMAP kinase, A-kinase, C-kinae, PI3 kinase系で駆動されているという、信号伝達系がわかった。 (合成研究1:性ステロイド)海馬神経細胞には性ステロイド合成系として、コレステロール→プレグネノロン→DHEA→テストステロン→DHT(男性ホルモン)→アンドロスタンジオールという経路を見出した。 これは3H-ステロイドの代謝をHPLCによって追跡することで見出した。テストステロン以降の反応を触媒する5α-reductaseや3α-HSD系が存在し機能していることを、mRNAの発現解析で見出した。 in situ hybridizationで5α-reductaseがグルタミン酸神経に集中して発現していることを発見した。 (合成研究2:コルチコステロイド)過去20年以上誰も成功しなかったが、最近5年間の努力で、コルチコステロンも副腎皮質とは独立に海馬の神経が合成する、ことを証明できるところまで来た。 「プレグネノロン→プロゲステロン→デオキシコルチコステロン(DOC)→コルチコステロン(CORT)経路」で合成する、「3β-HSD→P450(C21), P450(2D4)→P450(11β)」が海馬神経に存在することを解析した。 特に脳には存在しないと思われていたP450(C21)(DOC合成酵素)が神経に極少量存在することを、プライマーの設計を改善することで、発見した。P450(11β)がグルタミン酸神経に集中して発現していることを発見した。
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[Journal Article] Comparison between hippocampus-synthesized and circulation-derived sex steroids in the hippocampus2009
Author(s)
Hojo Y, Higo S, Ishii H, Ooishi Y, Mukai H, Murakami G, Kominami T, Kimoto T, Honma S, Poirier D, Kawato S
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Journal Title
Endocrinology 150
Pages: 5106-5112
Peer Reviewed
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