2010 Fiscal Year Annual Research Report
一分子FRET法による分子モーターキネシンの二足歩行メカニズムの研究
Project/Area Number |
21370066
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
富重 道雄 東京大学, 大学院・工学系研究科, 准教授 (50361530)
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Keywords | 分子モーター / 生物物理 / 一分子計測(SMD) / ナノマシン / 細胞内輸送 |
Research Abstract |
本年度はキネシン二量体の協調的な二足歩行運動の構造基盤を明らかにするために、昨年度明らかにしたヌクレオチドが結合していない状態のキネシンの結晶構造とこれまでに解かれているそれ以外のヌクレオチド状態での構造を元に、キネシン二量体の原子構造モデルを作成した。クライオ電子顕微鏡像にフィッティングすることにより得られたキネシン一微小管の複合体モデルを2つ組み合わせることによって、様々なヌレオチ状態での組み合わせの二量体モデルを作成した。それらを比較したところ、後ろ頭部がATP状態で前頭部がヌクレオチドなしの状態と比べて、両頭部がATP状態または両頭部がヌクレオチドなし状態ではネックリンカーの末端間距離が伸びてネックリンカーにかかる張力が増すことが明らかになった。これらの結果は、ネックリンカーの張力上昇を伴うために前後の頭部が同じヌクレオチド状態になることが阻害され、そのために頭部間の協調性が生まれるという二足歩行モデルを示唆するものである。 このモデルを実験的に検証するために、昨年度用いたネックリンカーを人工的に伸ばして張力を緩和させた変異体の運動をさらに詳しく解析した。この変異体の運動を一分子蛍光観察法を用いて観察したところ、ネックリンカーを伸ばすにつれて運動速度が低下した。また一分子FRET法を用いて運動中の頭部間の距離を計測したところ、ATP濃度が低い条件下でも両足結合状態を主にとることが示された。これらの結果は、ネックリンカーの張力を低下させることによって野生型では抑制されている構造状態に遷移できるようになったということを示すものであり、ネックリンカーの張力が頭部間の協調性に関わるというモデルを裏付けるものである。
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Research Products
(13 results)