2010 Fiscal Year Annual Research Report
ALKキナーゼによるがん抑制因子P53のチロシンリン酸化と転写活性化の抑制機構
Project/Area Number |
21370083
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Research Institution | National Cancer Center Research Institute and Research Center for Innovative Oncology, National Cancer Center Hospital East |
Principal Investigator |
江成 政人 独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, ユニット長 (90294058)
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Keywords | 癌 / 遺伝子 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
私達は、以前の研究からクラスリン重鎖(CHC)は核内に存在し、p53を介した転写の活性化因子として機能することを報告した。また、ある種のがんにおいてCHC遺伝子はALKキナーゼ遺伝子座で転座を起こし、その結果として生じるCHC-ALK融合タンパク質がp53の転写活性化能を抑制すること、ALKによってp53のチロシン残基がリン酸化されることを見出していた。昨年度、ヒトp53中に存在する9カ所のチロシン残基のうち3カ所がALKによってリン酸化されることがわかった。本年度は、ALK融合蛋白質を発現している細胞株を用いて、ALK融合蛋白質をsiRNAでノックダウンした際のp53活性について調べた。その結果、ALK融合蛋白質の発現を抑制すると、p53の発現量は変化しないが、その下流の標的遺伝子であるp21の発現が著しく増大し、そのp21の発現誘導は、p53が必要であった。また、ALKチロシンキナーゼに対する特異的低分子阻害剤を用いて、p53の転写活性化の回復が見られるか調べたところ、siRNAを用いた実験と同様の結果が得られ、ALK融合蛋白質がp53経路を阻害していることが裏付けられた。本来、ALKは受容体型チロシンキナーゼファミリーに属するタンパク質であり、主に、脳組織で発現している。そこで、本来のALKの機能にp53経路が関与しているかどうか、p53が野生型でかつ野生型ALK受容体が発現している神経芽腫細胞を用いて調べた。そのリガンドとして知られるPleiotrophinで細胞を処理したが、p53の細胞膜近傍への集積はあまり見られず、刺激依存的なp53のチロシンリン酸化も検出されなかった。ただし、PleiotrophinによるALKの活性化が非常に弱く、他のALKリガンドや条件等再度検討する余地があると思われる。
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Research Products
(5 results)