2009 Fiscal Year Annual Research Report
生体膜リン脂質非対称性の変化が制御する細胞機能の解析
Project/Area Number |
21370085
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田中 一馬 Hokkaido University, 遺伝子病制御研究所, 教授 (60188290)
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Keywords | 脂質の非対称性 / フリッペース / 細胞内小胞輸送 / 細胞極性 / 酵母 / エンドソーム |
Research Abstract |
真核細胞の細胞膜ではリン脂質の分布が細胞外と細胞内で異なること(リン脂質の非対称性)が知られているが、その生理機能はほとんど解明されていない。本研究では、リン脂質非対称性を形成するリン脂質トランスロケース(フリッペース:Cdc50-Drs2複合体)の細胞機能を中心に、脂質非対称性の変化が細胞内小胞輸送や細胞極性形成に果たす役割の解明を目指している。本年度はフリッペースによるエンドソームからの小胞形成機構について以下の研究成果を得るにとができた。 私達は、Cdc50-Drs2が初期エンドソームからの小胞形成過程に必要であることを明らかにしている。他のグループによるin vitroの解析から、Cdc50-Drs2の基質としてフォスファチジルセリン(PS)が有力視されている。事実、フリッペース変異株の増殖欠損を高発現状態で抑圧する遺伝子を検索したところ、PS合成酵素であるCho1が単離された。しかし、PSを特異的に認識するLact-C2をプローブに用いた解析により、フリッペース変異株においてもPSはエンドソーム上で露出していることが明らかとなった。また、PSを合成できないcho1変異株においても、エンドソームからの小胞形成は起こっていることも明らかとなった。これらの結果は、Cdc50-Drs2が小胞形成を促進する際に輸送する基質として、PSに加えて他のリン脂質も重要であることを示唆している。脂質の輸送による小胞形成メカニズムとして、(1)輸送された脂質が特異的に小胞形成関連タンパク質をリクルートする可能性と、(2)脂質の輸送が物理的に膜の変形を誘導して小胞形成を促進している可能性が提唱されている。私達の結果は(2)を支持し、フリッペースによる輸送小胞形成の一端を解明することができた。 以上の結果より、本年度の研究において着実な成果をあげることができた。
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Research Products
(3 results)