2011 Fiscal Year Annual Research Report
生体膜リン脂質非対称性の変化が制御する細胞機能の解析
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21370085
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田中 一馬 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 教授 (60188290)
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Keywords | 脂質の非対称性 / フリッペース / 細胞内小胞輸送 / クラスリンアダプター / 酵母 / エンドソーム |
Research Abstract |
真核細胞の細胞膜ではリン脂質の分布が細胞外と細胞内で異なること(リン脂質の非対称性)が知られているが、その生理機能はほとんど解明されていない。本研究では、リン脂質非対称性を形成するリン脂質トランスロケース(フリッペース:Cdc50-Drs2複合体およびLem3-Dnf1/Dnf2複合体)の細胞機能を中心に解析を行っており、小胞形成機構及び膜タンパク質の選別輸送機構について以下の研究成果を得た。 Arf1 small GTPaseのGAP (GTPase activating protein)であるGcs1は膜のcurvatureを認識するALPS motifを有する。今回、このALPS変異体がCdc50変異と組み合わさると、エンドソームからの小胞形成が阻害されることを見出した。Gcs1がフリッペースによって形成された小胞をALPSを介して認識し、小胞形成を制御している可能性が示唆された。 Drs2に結合するRcy1が、Laa1を介してAP-1クラスリンアダプターにリンクしていることを明らかにしている。今回、Rcy1変異株において、AP-1がエンドソームへ過剰に蓄積していることを見出した。この結果は、リン脂質のフリップによるAP-1局在化機構の解明に繋がるものである。 Lem3変異株においては、トリプトファン輸送体であるTat2が高度なユビキチン化を受けて液胞へ誤輸送される。今回、Tat2のアミノ末端領域がフリッペースの基質であるPS(フォスファチジルセリン)特異的にリポソームに結合することを見出した。PSを含む脂質非対称性の異常が、Tat2のアミノ末端領域を介してTat2の高度なユビキチン化に繋がっていることが示唆された。 以上のように、生体膜の普遍的な性質である脂質非対称性の機能と制御機構について、新しい知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、Cdc50-Drs2フリッペース複合体と小胞形成に働く因子群との機能的関係を明らかにすることを目的としている。今回、フリッペースとArf1 GAPであるGcs1との機能的関係の一端を解明し、また、フリッペースによるAP-1クラスリンアダプター局在化機構の解明に繋がる発見をすることができた。さらに、本研究ではLem3-Dnf1/2フリッペース複合体によるTat2膜タンパク質の選別輸送制御機構の解明も目的としているが、今回PSとTat2との直接的な結合を明らかにすることにより、分子機構解明に繋がる発見をすることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
フリッペースによる細胞機能制御機構の解明については、研究は順調に進んでおり、今後は論文発表を目指して必要な実験を更に進めて行く。一方で、フリッペース以外のタンパク質による膜脂質非対称性の制御機構解明に向けて、新しいスクリーニング系の構築も進めて行く。以上により、膜脂質非対称性の機能と制御についての総合的な解明を目指す。
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