2011 Fiscal Year Annual Research Report
イネMITE・mPingの転移機構の解明と高効率トランスポゾンタギング系の開発
Project/Area Number |
21380004
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
築山 拓司 京都大学, 農学研究科, 助教 (00423004)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥本 拓司 京都大学, 農学研究科, 教授 (90152438)
寺石 政義 京都大学, 農学研究科, 講師 (80378819)
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Keywords | イネ / トランスポゾン / MITE / 転移機構 / QTL / ゲノム進化 |
Research Abstract |
イネトランスポゾンmPingを用いた高効率トランスポゾンタギング法の開発には、mPingの転移・増殖機構を明らかにする必要がある。これまでの研究から、mPingの切り出し頻度は挿入位置によって異なり、切り出し頻度の低いmPingはマイナス鎖のメチル化程度が高いことが明らかになっている。本年度は、まず、バイサルファイトシークエンス法を用いて切り出し頻度が異なる16箇所の、mPing挿入位置のメチル化程度を解析した。その結果、mPingの挿入位置から遺伝子までの距離に比例してCHGサイトのメチル化程度が上昇することが、mPingの切り出し頻度を低下させる要因であることが明らかになった。また、全く切り出しがみられなかったmPingの中にもCHGサイトのメチル化程度の低いものが含まれていたことから、mPingは宿主によるDNAメチル化の標的となり得るものの、DNAメチル化のみによって不活化されないことが明らかになった。次いで、ユビキチン様タンパク質RURM1の機能喪失によるmPing転移活性化の機構を明らかにするために、タンパク質一過性発現系を用いてRURM1の機能喪失がタンパク質翻訳におよぼす効果を解析した。その結果、RURM1の機能喪失によってコドン特異的に翻訳効率が低下することが明らかになった。このことは、RURM1の機能喪失によるmPingの活性化はmPingの転移を制御する因子の翻訳異常に起因する可能性があることを示唆している。申請者らはこれまでに、mPing転移頻度に関する5つのQTLが同定されている。本年度は、これらQTLの候補領域を絞り込むために、日本晴×銀坊主の交雑F9系統230系統を用いて高密度連鎖地図を作製した。この連鎖地図を用いることで、次年度はQTL領域に座乗する候補遺伝子を迅速に同定できると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した研究計画を概ね遂行できた。このことは、申請者らが、日々、研究結果について議論し、綿密に連携することで、円滑に実験を行ったためである。しかし、平成23年に計画していた、mPing転移頻度に関するQTLの候補遺伝子の調査は実施できなかった。これは、供試した系統数が多く(200系統)、トランスポゾンディスプレイを用いたmPing転移頻度の解析が終了しなかったためである。すでに高密度連鎖地図は作成済みであり、次年度は候補遺伝子を同定できる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、平成24年度科学研究費助成事業交付申請書に記載した計画に従って、mPingの転移・増殖機構を解明し、mPingを用いた高効率のトランスポゾンタギング法の開発を目指す。まず、mPing転移頻度に関するQTL解析を再度行い、QTLの候補遺伝子を同定する。高密度連鎖地図はすでに作成済みであることから、QTLが得られれば、迅速に候補遺伝子が同定できると期待される。これまでの研究から、mPingはDNAメチル化のみによって不活化されないことが明らかになっている。そこで、次年度は、自律性因子Ping/Pongがコードするトランスポゼースの酵素学的特性を解析し、mPingが宿主のエピジェネティックな転移抑制機構を回避している機構を明らかにする。また、イネユビキチン様タンパク質RURM1の機能喪失がmPingの転移を活性化する機構を明らかにするために、RURM1の機能喪失がタンパク質の翻訳におよぼす影響を解析する。そして、これまでの結果を取りまとめ、論文として発表する。
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