2011 Fiscal Year Annual Research Report
ミトコンドリア・レトログレード・シグナリングの機構解明と育種的利用
Project/Area Number |
21380009
|
Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
村井 耕二 福井県立大学, 生物資源学部, 教授 (70261097)
|
Keywords | コムギ / 細胞質置換系統 / ミトコンドリア・レトログレード・シグナリング / pistillody / 花成 / 稔性回復遺伝子 |
Research Abstract |
酵母や哺乳類細胞において、ミトコンドリアから発せられ核遺伝子の発現に影響を及ぼすシグナルの存在が明らかとなり、ミトコンドリア・レトログレード(RTG)・シグナルと呼ばれている。本研究の目的は、細胞質置換コムギ系統で誘発される1)pistllody(雄ずいの雌ずい化)および2)出穂性改変という2つの現象をモデルケースとし、植物(コムギ)におけるRTGシグナリングの分子遺伝機構を解明し、育種的利用の可能性を検証することである。 1)pistillody マイクロアレイ解析により、ミトコンドリア原因遺伝子orf260と核のクラスBMADSボックス遺伝子を結ぶRTGシグナリングに関与すると思われるカルモジュリン結合タンパク質遺伝子(WCBP1)を同定し、詳細な解析を行った。その結果、植物のRTGシグナリング:においてもカルシウム・シグナルが重要な要因であることが示唆された。また、ORF260タンパク質の機能を解析するため、大腸菌系を用いてORF260タンパク質の機能解析を行った。その結果、ORF260は膜結合タンパク輩であることが示唆された。一方、pistllodyの育種的利用として、ハイブリッドコムギ品種を開発するため、これまでに育成した優良PCMS(日長感応性細胞質雄性不稔)系統に花粉親を人工交配して得たF1植物の調査を行い、優良F1組合せを特定した。 2)出穂性改変 人工気象器を用いた栽培試験および遺伝子発現解析の結果、細胞質置換系統は細胞質(ミトコンドリア)ゲノムの影響は、低温処理によるVRN1遺伝子発現挿制の解除の阻害という形で現れることが明らかとなった。一方、このRTGシグナリングを利用したコムギの出穂性の改変の実用性を検討するため、代表的な日本コムギ品種13品種と細胞質置換系統とを人工交配し、細胞質置換系統(BC2植物)を得た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)pistillodyミトコンドリア原因遺伝子orf260と核のMADSボックス遺伝子を結ぶRTGシグナリングに関与する新規カルモジュリン結合タンパク質遺伝子(WCBP1)を同定した。優良F1組合せを特定した。 2)出穂性改変日本コムギ品種13品種の細胞質置換系統を作出した。
|
Strategy for Future Research Activity |
1)pistllody細胞質置換コムギ系統におけるRTGシグナリングに、カルシウムイオンがどのように関与するのかを明らかにする。それにより、酵母・哺乳類細胞におけるRTGシグナリングと植物のRTGシグナリングの共通点と相違点を明らかにする。優良F1の農業形質を詳細に解析する。 2)出穂性改変細胞質置コムギ系統における花成関連遺伝子の発現パターンの変化を詳細にモニターリングすることにより、RTGシグナリングの作用する成育ステージを特定するo細胞質置換コムギ系統の農業形質を詳細に解析する。
|
Research Products
(7 results)