2009 Fiscal Year Annual Research Report
温暖化によるイネ科多年生雑草チガヤの分布拡大と雑種形成に関する雑草学的研究
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21380015
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
冨永 達 Kyoto University, 農学研究科, 教授 (10135551)
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Keywords | 雑草 / チガヤ / 雑種形成 / 生態 / マイクロサテライトマーカー |
Research Abstract |
日本では、チガヤの普通型と早生型が分布している。普通型は東北南部から沖縄県の水田畦畔や路傍、芝地、果樹園などに広く生育し、早生型は北海道から九州の河川敷などやや湿った生育地に局所的に分布している。普通型が侵略的な特性をもつのに対し、早生型の生育地は限られている。温暖化にともない普通型の分布域が北上し、新たな雑.草害が生じ、さらに、従来から分布している早生型との雑種形成による新たな雑草害が懸念される。本年度は、まず、大阪府由来の普通型個体の出穂期を加温により促進し、大阪府由来の早生型個体の出穂期と同調させ、両型を人為的に交雑し、正逆雑種個体を約800個体作出し、増殖した。雑種個体の1年目の生育量は、個体により大きく異なり、草丈および乾物生産量において幅広い変異を示した。また、集団のクローン構造や遺伝的変異の解析、普通型、早生型および雑種の識別に用いる遺伝マーカーとして、1980年代初めに採集し、現在も系統維持しているチガヤの普通型および早生型のうち約50系統を用いてマイクロサテライト(SSR)マーカーを新たに開発した(MaedaetaL,2009)。新たに開発したSSRマーカーによって、集団のクローン構造を明らかにすることが可能となった。また、既に報告されているGOTアイソザイム分析を併用することによって普通型、早生型および雑種を迅速に識別することが可能となった。普通型の分布域北上の実態を明らかにするために、1980年代初めに行った現地調査で明らかにした普通型の分布域北限であった秋田県および岩手県北部を中心にチガヤを新たに採集し、開発したSSRマーカーを用いて同定した。その結果、1980年代の分布北限よりも北方で普通型の生育を確認した。
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Research Products
(1 results)