2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21380047
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
間藤 徹 京都大学, 農学研究科, 教授 (50157393)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
落合 久美子 京都大学, 農学研究科, 助教 (40533302)
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Keywords | イネ / ホウ素 / ホウ素過剰耐性 / 育種 |
Research Abstract |
これまでにIR64を遺伝的背景としてホウ素過剰耐性遺伝子BET1近傍のみがコシヒカリに由来する系統を得た。今年はこの自殖種子の中からもっとも短い、BET1を含むコシヒカリ断片をもつ系統(IR64-コシヒカリBET1)を選抜し、栽培試験を行った。栽培試験は土壌を用いた。すなわち北白川水田土壌4kgを1/5000アールポットに充填し、窒素-リン-カリウムを慣行栽培量、添加した。ポットには下部に水抜き用の穴をあけ、土壌を含むポットごとホウ素溶液(0、10、20ppm)に浸漬した。水は下穴から上昇し土壌を湛水状態とした。ホウ素の一部は土壌に吸着されるが、ホウ素溶液に浸漬し続けると二週間後には田面水のホウ素濃度も外液と同じ濃度に達した。乾燥地帯で見られるホウ素過剰水田のホウ素濃度は1~30ppmと報告されており、現地の状況をよく反映した栽培システムが構成できた。ここにコシヒカリ、IR64、IR64-コシヒカリBET1を直接播種し生育を追跡した。0ppm対照区、10ppmホウ素区では、すべてのイネが順調に発芽した。しかし10ppm区の生育は対照区に比べ遅かった。20ppmホウ素区ではコシヒカリ、IR64-コシヒカリBET1にくらべIR64の発芽が大幅に遅れた。このため播種1ヶ月後にはIR64とIR64-コシヒカリBET1の生育には大きな差がついた。しかし栄養生長期にはいると生育の差はなくなった。分ゲツ期には両者にやや差が見られ、IR64-コシヒカリBET1がIR64に優った。しかし、開花期、登熟期には両者の差はふたたび少なくなった。栽培期間を通しての観察によると、BET1遺伝子によるホウ素過剰耐性は、発芽期、分ゲツ期に顕著に発揮され、これが収量の増加をもたらした。これはホウ素過剰によるイネの生育障害が、発芽の遅れ、分ゲツ数の低下に起因するとするこれまでの知見とよく一致した。
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