2010 Fiscal Year Annual Research Report
高地温が助長するイネ幼苗の低温障害の発生機構の解明
Project/Area Number |
21380051
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
鈴木 健策 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 東北農業研究センター・寒冷地温暖化研究チーム, 主任研究員 (90355280)
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Keywords | イネ幼苗 / 気温地温バランス / 光化学系II複合体 / 低温障害 / 電子伝達 / 光合成 / クロロフィル蛍光 |
Research Abstract |
高地温が植物の葉の低温障害を助長するというこれまで全く知られていなかった現象の発生機構を明らかにする目的で、3葉期のイネ幼苗を用いて以下の様な研究を行った。 低温下における光合成機能の比較解析:高地温に依存した低温障害の最初の反応を特定する目的で、暗条件で低温処理中の幼苗の葉について、クロロフィル蛍光(光化学系II、PSII)とP_<700>吸光度変化(光化学系I、PSI)の同時高解像度解析(Q_A decayとOJIP curveの解析)を行った。その結果、低温処理中で光が当った直後から、PSII複合体のQ_B付近で電子が遮断されること、PSIは光照射開始後10-200ミリ秒に酸化状態のまま(本来ならPSIIからの電子で著しく還元される)であることを示す結果を得た。これらは、光の有無に関わらず高地温低気温処理により、電子の流れがQ_B付近で遮断されることを示唆する。 光化学系II複合体構成タンパク質に及ぼす影響:個々の主要構成タンパク質には量的変化がないことを示す予備実験結果をSDS-PAGEを用いたイムノブロッティング解析で得た一方で、複合体の構成に光に依存した変化があることがBlue-Native PAGEを用いたイムノブロッティング解析で明らかになった。低温処理(気温10℃/地温25℃)を暗黒下で24時間、照明下で4.5時間行ったところ、約630kDa、約300kDa、約240kDaの複合体の量が著しく増加し、後者2つはCP43を含んでいなかった。PSII二量体(約570kDa)とPSII単量体(約350kDa)には顕著な変化はなかった。またCP43、CP47、Cytb_<559>の両サブユニットは、いずれも単量体が増加した。これらの変化は高地温依存の低温障害に依存はしているものの、暗黒下では認められず二次的な変化と考えられる。しかし障害発生機構解明のための重要な手掛かりとなる。
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Research Products
(4 results)