2009 Fiscal Year Annual Research Report
多糖類・脂質マイクロ分散系の作出と大腸送達システムの構築
Project/Area Number |
21380075
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
中嶋 光敏 University of Tsukuba, 大学院・生命環境科学研究科, 教授 (30150486)
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Keywords | 大腸送達 / 酪酸 / カプセル化 / キトサン / トリパルミチン / ミリスチン酸 / 胃モデル液 / 小腸モデル液 |
Research Abstract |
経口摂取においては胃で分解されずに、小腸や大腸に送達可能な壁材を利用することになる。小腸送達システムについては多くの実用化例があるが、大腸送達システムは確立されていない。本提案は難消化性糖類を壁材とする新規大腸送達システムの構築が必要とされる。ほとんどの栄養素は小腸で吸収されるが、大腸送達の例として、酪酸を検討した。酪酸は大腸の蠕動運動の促進に貢献する効果を持っている。高濃度で酪酸の大腸送達をめざして5%の酪酸水溶液を調製した。小腸で酪酸吸収を防ぐため難消化性多糖類のキトサンを混合して、酪酸・キトサン水溶液を作製し、水溶液とトリパルミチンを高温乳化してW/Oエマルションを作製し、固体化後、細かく砕きサンプルとした。油相としてトリパルミチンの他にミリスチン酸も用いた。酪酸水溶液にキトサンを5%の割合で混合し、作製した固形物を小片化して、高温融解したトリパルミチンやミリスチン酸に浸し、すぐに取り出してサンプルとした。これらの調製サンプルを用いて胃モデル液や小腸モデル液を用いた消化実験を行った。酪酸量は不純物を取り除いた後にHPLCを用いて分析した。W/Oエマルションのサンプルが小腸消化終了時に溶出した酪酸量が多いが、胃消化時に3割ほど溶出してしまった。油相に分解されにくいミリスチン酸を使用した場合は、消化後も酪酸は溶出しなかった。キトサン混合物サンプルは胃消化後に10%ほど溶出し、小腸消化後の残存酪酸量は40%程度であった。酪酸を経口投与して胃および小腸を通り抜けて直接大腸に送り届ける手法として、酪酸水溶液にキトサンを5%の割合で混合して作成した固形物粒子を、常温で固化して油をカプセル化する方法が有力であることが示された。さらに効率化した大腸送達システムの検討を続けている。
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