2010 Fiscal Year Annual Research Report
食物質による腸上皮の免疫制御機能の修飾に関する分子機構の解析
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21380077
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
戸塚 護 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 准教授 (70227601)
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Keywords | 腸管上皮細胞 / Toll様受容体 / 腸管免疫系 / カルノシン / 乳酸菌 / IgA / サイトカイン |
Research Abstract |
腸上皮の免疫制御機能に対する食物質の作用を明らかにすることを目的として、カルノシン、乳酸菌、ビフィズス菌を対象に、in vitroおよびin vivoにおいて、その作用メカニズム、腸管免疫系に及ぼす効果について解析を行った。腸管上皮細胞の機能をin vitroで解析するために必要な細胞株として、成体BALB/cマウス腸管から腸管上皮細胞初代培養を調製し、SV40 large T抗原遺伝子を導入することによって、新規マウス小腸上皮細胞株(aMoS7)および大腸上皮細胞株(aMoC1)を樹立した。マウス小腸由来MoS13細胞にビフィズス菌体を加えて刺激することにより得られた培養上清が、マウス腸管固有層B細胞のIgA産生を増強するという現象は、Toll様受容体(TLR)1/2のリガンドであるPam3CSK4でMoS13細胞を刺激しだ際にも同様に認められた。また、カルノシンはMoS13細胞においても、Pam3CSK4刺激により誘導されるIL-6産生を増強する働きが認められた。IL-6遺伝子プロモーターの下流にルシフェラーゼ遺伝子を結合したものをMoS13細胞に導入したレポーターアッセイ系において、Pam3CSK4で誘導されるプロモーター活性はカルノシンの添加で増強された。一方、カルノシンはTLR3リガンドであるPolyI:Cで刺激した場合にもIL-6産生増強効果を示した。ところが、MoS13のTLR刺激で誘導されるIgA産生誘導因子の産生において、カルノシンはPam3CSK4とともにMoS13細胞を刺激した際にはIgA産生の促進に働いたが、PolyI:Cの場合にはその促進作用は認められなかった。 卵白アルブミン(OVA)特異的T細胞受容体遺伝子導入マウスであるDO11.10マウスに、OVA含有水を自由摂取させることにより経口免疫寛容を誘導する実験系において、乳酸菌を強制経口投与した場合に、この経口免疫寛容の誘導が増強されることを見いだしている。この時、腸管粘膜固有層において(1)制御性T細胞活性が増強されること、(2)形質細胞様樹状細胞が増加することが示され、これが経口免疫寛容誘導の増強に関与することが示唆された。
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