2011 Fiscal Year Annual Research Report
食物質による腸上皮の免疫制御機能の修飾に関する分子機構の解析
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21380077
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
戸塚 護 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 准教授 (70227601)
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Keywords | 腸管上皮細胞 / Toll様受容体 / 腸管免疫系 / カルノシン / 乳酸菌 / IgA / サイトカイン / ビフィズス菌 |
Research Abstract |
腸上皮の免疫制御機能に対する食物質の作用を明らかにすることを目的として、カルノシン、乳酸菌、ビフィズス菌を対象にその作用メカニズム、腸管免疫系に及ぼす効果について解析を行った。 マウス小腸上皮細胞株MoS13細胞をTLRリガンド刺激することにより誘導されるIL-6分泌およびIL-6mRNA発現は、前培養時およびTLRリガンドと同時に添加したカルノシンの濃度依存的に亢進した。MoS13細胞にカルノシンのみを添加した場合にも、IL-6分泌およびIL-6mRNA発現の低値ながらも有意な亢進が認められた。カルノシンのIL-6産生亢進効果は、カルノシンによる前処理を行わずTLRリガンドと同時に添加した場合には認めらず、カルノシン前処理を行った場合にのみ認められた。カルノシン前処理後にはカルノシンが細胞内で各構成アミノ酸に分解されずに存在していた。TLRリガンド刺激したMoS13細胞培養上清は、未刺激の培養上清に比べてBALB/cマウス小腸粘膜固有層由来のIgA抗体形質細胞のIgA抗体産生を増強し、カルノシン処理とともにTLRリガンド刺激して得られた培養上清はさらにIgA抗体産生を増強した。このIgA抗体産生増強効果はIL-6中和抗体の添加によって抑制された。0.5%カルノシンを含む飲料水を2週間自由摂取させたBALB/cマウスの小腸内腔粘膜組織中のIgA抗体量を調べた。その結果、空腸および回腸において、粘膜組織中IgA抗体量は対照群に比べてカルノシン投与群で有意に高い値を示したことから、カルノシンの経口投与はマウス腸管粘膜のIgA産生を増強することが明らかとなった。 ビフィズス菌(Bifidobacterium bifidum OLB6378株)の加熱死菌体を、マウス新生仔腸管の組織培養系に添加することによりIgA抗体の管腔への輸送にかかわる多量体免疫グロブリン受容体(pIgR)の発現が有意に亢進した。このpIgR発現亢進効果は、IL-1α遺伝子欠損マウス由来の腸管組織では認められたのに対し、MyD88遺伝子欠損マウス由来の腸管組織では認められなかったことから、腸管上皮細胞がTLRを介してビフィズス菌体を認識し、pIgR発現が誘導されることが示唆された。
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Research Products
(11 results)