2009 Fiscal Year Annual Research Report
広域分布性森林性動物が分布域辺縁で隔離された特有の森林に適応する機構と過程の解明
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21380086
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
押田 龍夫 Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine, 畜産学部, 准教授 (50374765)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 靖 帯広畜産大学, 畜産学部, 助教 (40332481)
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Keywords | 広域分布性森林性哺乳類 / エゾリス / エゾモモンガ / トドマツ優占混交林 / エゾマツ優占混交林 / 採食資源 / 生息密度 / 分子系統地理 |
Research Abstract |
広域分布性森林性哺乳類であるエゾリス・エゾモモンガが北海道に特有な森林植生に対して進化生態学的にどのような適応をしているのかを解明するため、平成21年度においては以下の野外調査を実施した。加えて、エゾリスの進化的歴史を把握するため、ミトコンドリアDNAチトクロムb遺伝子塩基配列に基づきその系統地理学的特徴を明らかにした。 1)エゾリスについては採食資源の一つであるエゾマツ毬果の利用割合を調査した。調査区内において、約10,000個の毬果を採集し、その利用頻度・利用された毬果の形態的特徴を分析した所、存在量に対するその利用率は10%程度であり、被食毬果と非被食毬果の形態的特徴には差異が見られなかった。エゾリスはエゾマツ毬果を一定の割合で非選択的に利用する事が示されたため、両者の間には生態的学に安定した種間関係が存在する可能性が示唆された。 2)エゾモモンガに関しては、北海道の山間部で最も多いトドマツ優占混交林とエゾマツ優占混交林のどちらにより多く生息するのかを明らかにするため、各々の森林において生息密度の推定を行った。その結果、エゾモモンガはトドマツ優占混交林により多く生息する事が明らかとなり、本種が生態学的にトドマツ資源を多く利用している事が示唆された(投稿論文準備中)。予備調査として一昨年から継続して行っている樹洞調査の結果からもトドマツの樹洞は巣穴として使用される頻度が高い事が明らかになり(Russian Journal of Theriology論文審査中)、本種は北海道に特有な森林資源を効率よく利用している事が示唆された。 3)エゾリスの分子系統地理的パターンについては、北海道内における過去の集団隔離・分断および高い頻度の変異性が見られず、氷期における集団の縮小(避難域の形成)およびその後の急激な拡張を示唆する結果が得られた(Journal of Mammalogy論文審査中)。
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Research Products
(3 results)