2010 Fiscal Year Annual Research Report
森林生態系の生食・腐食連鎖に関わる節足動物の群集構造と生態系機能における位置
Project/Area Number |
21380093
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
肘井 直樹 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 教授 (80202274)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 智弘 東京農工大学, 農学部, 助教 (60521052)
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Keywords | 森林生態系 / 節足動物群集 / 樹冠層 / クモ群集 / 捕食者 / スギ人工林 / 土壌動物 / 林床 |
Research Abstract |
森林生態系では、クモ類(Araneae)は、樹冠層、土壌層いずれにおいても、常に高い個体数密度と現存量を維持しており、節足動物群集の主要な恒常的捕食者の一群を形成している。しかし、クモ群集とその餌動物との関係を明らかにした研究は少なく、とくに森林では、クモ類を核とした節足動物群集の食物網構造はほとんど明らかになっていない。本研究では、スギ林の樹冠層と林床においてクモ類を含む節足動物を定期的に調査し、生息場所ごとのクモ群集と潜在的な餌資源との対応関係を明らかにした。 調査は愛知県北東部の40年生スギ人工林において、月1回の頻度で行なった。樹冠層では、各調査木(樹高23m、胸高直径24cm、5本)の枝葉に対するビーティングと隣接タワー上に設置した水盆トラップ、一方林床では、ピットフォールトラップにより節足動物を採集した。また、樹冠層における採集は、ほぼ生葉のみからなる上層と、枯枝葉が優占する下層にわけて行ない、さらに樹冠層では、造網型クモ類の出現頻度を記録した。採集したクモ類は種、餌群集は目レベルで同定を行ない、さらにクモ類を俳徊・造網といった生活型、餌群集を歩行・飛翔といった分散型に分類して生息場所ごとの対応関係を調べた。 樹冠層では、両層で俳徊型のクモ類が優占したが、上層では円網性の造網型クモ類が空間を広く利用していた。餌群集は全体的にトビムシ目、ダニ目が優占していたが、上層ではハエ目の個体数が下層に比べて有意に多かった。林床のクモ相は、樹冠層とは異なり、網目が密な造網型クモ類が優占していた。一方、林床の餌群集は、トビムシ目、ダニ目などの小型節足動物に限られていた。以上の結果、樹冠層と林床いずれにおいても、クモ類の生活型と餌群集の分散型の構成には、明瞭な対応関係がみられた。このことは、クモ類が生息場所ごとの餌環境に反応して、固有の群集を形成していることを示唆している。
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