Research Abstract |
ブナ科樹種間のRaffaelea quercivoraに対する感受性の差異の指標は,非通水域の大きさであると示唆されている.非通水域の形成程度に関わる病原菌の伸展には,樹種間の道管配列の違いが考えられるが,両者に関する研究は行われていない.そこで,道管配列が病原菌に対するコナラ属樹種の感受性に与える影響を明らかにするため,放射孔材のアラカシ,環孔材のミズナラと外国産コナラ属3樹種の苗木に接種を行い,非通水域の大きさと材内における菌糸の伸展距離を測定した.さらに,組織構造をそのまま保持した滅菌材片に接種を行い,材片での菌糸の伸展距離を測定した.ミズナラとQuercus coccinea接種木の非通水域の割合は,その他の接種木,対照木に比べて有意に高く,外国産環孔材樹種の接種木間で有意差があった.このことから,R.quercivoraに対する環孔材樹種間の感受性に差異があると考えられた.また,接種木における菌糸の伸展距離は樹種間で有意に異なり,非通水域との間に有意な正の相関が認められ,非通水域の形成にはR.quercivora菌糸の伸展程度が密接に関与し,菌糸の伸展程度による感受性の評価は可能と考えられた.さらに,滅菌材片での菌糸の伸展距離は樹種間で有意に異なり,その違いは接種木における菌糸の伸展距離,非通水域の割合の差異と一致しなかった.以上のことから,樹種間の道管配列の違いは,菌糸の伸展や非通水域の形成や感受性の差異に及ぼす影響も小さいと考えられた. ブナ科樹木萎凋病菌を接種したミズナラ苗をMRIで観察した結果,木部の水分分布には顕著な変化は見られなかった.接種苗の木部を液体窒素で凍結したまま採取し,クライオSEMを用いて観察した結果,接種の影響による道管のエンボリズムが発生した範囲を可視化することができた.
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