2009 Fiscal Year Annual Research Report
森林土壌-渓流系における溶存有機物の動態に関する研究
Project/Area Number |
21380096
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉岡 崇仁 Kyoto University, フィールド科学教育研究センター, 教授 (50202396)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
徳地 直子 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 准教授 (60237071)
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Keywords | 溶存有機物 / 森林流域生態系 / 渓流 / 溶存有機態炭素 / 三次元蛍光 / 腐植物質 / 錯体 / 溶存鉄 |
Research Abstract |
本研究の目的は、森林土壌から渓流に流れ出る溶存有機物の質と量の変動を解析し、森林環境の変化にどのように応答するのかを明らかにすることであり、以下の3項目を実施することとした。 (1)土壌浸透・渓流水形成過程における溶存有機物の変質 (2)溶存有機物生成・消費に及ぼす窒素栄養塩の影響 (3)溶存有機物の錯体形成能 平成21年度は、これら3項目の基礎となるデータを取得するため、本研究の主対象地である芦生研究林とそこを源流とする由良川流域での渓流・河川水調査を行った。溶存有機物(溶存有機態炭素)の濃度は、森林を集水域とする渓流で変動が大きく、また、下流に向かって上昇する傾向が見られた。溶存有機物の多くを占めるとされている腐植物質に関しては、三次元蛍光測定を実施した。本補助金にて購入した三次元分光蛍光光度計を用い、PALAFAC分析による蛍光ピークの同定を行ったところ、1つのタンパク質様蛍光ピークと3つの腐植物質様蛍光ピークが検出された。そのうち、腐植物質様蛍光はほぼ同様の空間分布を示したが、下流に向かって短波長側のピークにシフトすることが示され、流下過程における溶存有機物の変質あるいは森林由来とは異なる溶存有機物が中下流域で附加されている可能性が示唆された。溶存鉄の濃度については、1.3μM以下(<70μg1^<-1>)と日本の河川水濃度としては低い部類であることが分かった。この溶存鉄濃度は、溶存有機態炭素濃度および腐植物質様蛍光強度との相関が見られ、錯体を形成している可能性が示唆された。 今年度は、三次元蛍光測定の立ち上げ、蛍光強度の標準化・PALAFAC分析プログラムの整備と溶存鉄濃度分析に時間がかかり、土壌水試料の分析や限外ろ過による溶存有機物の分画等を実施することが出来なかった。平成22年度にはこれらの手法を確立し、溶存有機物と溶存鉄の空間分布と相互作用について解析する予定である。
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Research Products
(1 results)