2011 Fiscal Year Annual Research Report
森林土壌-渓流系における溶存有機物の動態に関する研究
Project/Area Number |
21380096
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉岡 崇仁 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 教授 (50202396)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
徳地 直子 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 准教授 (60237071)
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Keywords | 溶存有機物 / 森林流域生態系 / 渓流 / 溶存有機体炭素 / 三次元蛍光 / 腐植物質 / 錯体 / 溶存鉄 |
Research Abstract |
平成23年度も引き続き、本研究の主対象地である由良川流域での渓流・河川水調査を行い、2年以上の期間にわたる溶存有機物等水質の季節的変化の様相を把握することができた。これにより、溶存有機物、溶存鉄濃度ともに森林域よりも農耕地ないしは市街地からの排水の影響を受けて濃度が上昇することが明らかとなった。溶存成分のうち、水域における生物生産にとって栄養となる硝酸塩に関して、窒素と酸素の安定同位体組成を解析したところ、集水域の面積に占める森林の割合が95%以上を占める渓流においては、降水由来の硝酸塩の割合が数%~10%で変動したが、農耕地や市街地の占める割合が大きくなる中下流では、2~4%と低いことが分かった。これらのことから、由良川の水質は、森林を主な集水域とする渓流域では、降水の影響と集水域内の水文過程によって大きく左右され、中下流では、人間活動によって、溶存有機物も硝酸塩も増加していることが明らかとなった。溶存有機物の動態を解析するために、土壌の培養実験を行った。用いた土壌は、地上植生(草本類)のバイオマスがシカによる食害の影響を受けている実験区と受けていない実験区で採取したものであるが、地上バイオマスの影響は見られず、土壌から水抽出できる溶存有機物量と硝化活性との間に正の相関が見られた。これは、渓流水で知られている溶存有機物と硝酸塩濃度の相関とは異なっており、土壌から渓流水に流出する水文過程での水質変化が影響している可能性がある。また、土壌中での窒素循環と有機態炭素循環の関係を調べるために、窒素栄養塩添加実験を実施し、現在その試料を分析中である。人工林伐採による土壌水・渓流水中の溶存有機物の動態解析に関しては、伐採実験計画の遅れにより、平成24年度の開始となってしまった。本科学研究費助成事業の最終年度であるが、できるかぎりの調査を行い、森林伐採と溶存有機物動態の関係を明らかにしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
渓流・河川の広域調査とその分析に時間がかかり、溶存有機物の質を探るための分画作業を進めることができなかった。森林土壌の調査については、一定の進捗があったが、他の研究プロジェクトが実施する予定であった芦生研究林での伐採実験が遅れているため、その場所を用いた調査に関しては、事前調査のみ実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
伐採実験が平成24年度に実施されることが決定したので、実験区を用いた溶存有機物動態の調査を進める。研究期間中には、伐採直後の変化しか追跡できないが、期間終了後も継続調査することによって、所期の目的を達成したい。また、限外ろ過装置による溶存有機物の分画も軌道に乗せる目途が立ちつつある。土壌調査については、試料の分析を着実に進める手配を整えることができている。
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Research Products
(3 results)